人からどう思われるか気になる、人から嫌われたくない。人の目が気になる。
日本人に多いこの悩みを、どう克服すればいいのか。
カギは過去のトラウマ解消、自己否定をやめる、相手をしっかり観察する。
事例を交えてその原因と克服のプロセスを紹介します。
【筆者プロフィール】
心理カウンセラーとして6000件以上(2020年4月現在)のカウンセリングを実施。
5年間にわたりスクールカウンセラーとして教育現場の問題解決にあたり、現在も個別に教育相談を受ける。
大手一部上場企業を始めとした社員研修の講師として10年以上登壇し、臨床カウンセラー養成塾を10年以上運営。コーチとしても様々な目標達成に携わる。
著書「感情は5秒で整えられる(プレジデント社)」は台湾でも出版された。
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人の目を気にしてしまう(気になる)悩み
先日、某企業の新入社員研修の講師をしました。
無事に研修を終え、帰り支度をしていると、新入社員の子が4人ほど、私の所に質問に来ました。
講義中に私が、後で質問も受け付けるので、帰り支度をしている時でも声をかけてと伝えたからです。
その中の一人の女子社員が、こんな質問(というか相談)をしてきました。
「私はどうしても人の目が気になってしまうんです。
だから一人で図書館などにも行けません。
これを克服するにも、今日学んだことを実践すればいいですか?」
その女子社員は笑顔でしたが、その笑顔に不安そうな様子もうかがえました。
そこで私は、こんな風に答えました。
「●●さん(その社員)が該当するかは、わからないけど、人の目が気になる人は、自己評価が低い人が多い。
自分のことをダメな人間と思いがちなので、こんな自分を知られたくないと、無意識に警戒してしまう。
人からどう思われるかということは、人から悪く思われていないかを気にすること。
だからまず、自分を大切に思えるようにしてほしい。
特に、ネガティブな気持ちや考えも、自分の大切な一部と思うこと。
これをじっくり、時間をかけて。
年単位のプロジェクトのつもりで取り組んでみて。
たとえ5年かかったとしても、それはその後の人生で一生の財産となるから。」
その女子社員は途中で質問をしながら私の話の一つ一つに頷きながら聴いていました。
そして話を聞き終わったら遠くを見据えるように「はい、じっくりやってみます、ありがとうございます。」と言いました。
自分から質問にくるくらいだから、こういう人は大丈夫なんですよね。
ただ、このやり取りから今回は、改めて人からどう思われるか、気にしない方がいいのかについて考えてみます。
人からどう思われているか気になる?
結論からいうと、こういうことなんです。
一番よいのは「人からどう思われているかに注意は払うけど、気にはしない」こと。
つまり「注意を払う」ことと「気にする」ことは似ているようで全然違ってくるんですね。
注意を払うには、冷静でなければならず、その状況を正確に認識し、俯瞰した視点も必要です。
だから、相手に上手に合わせながらも、自分の言いたいことも言えたり、ひっこめたりできる。
相手がどんな人間かも見極められるし、それによってコミュニケーションの仕方の判断もできる。
言葉や態度の選び方、距離の取り方など一つ一つ適切にできるわけです。
一方「気にする」というのは、周りが見えているようで見えていない。
その状況も、相手のことも、しっかりとは見えていないんです。
だから、怖がるばかりでその場にあった言動が取れない。
この両者の最大の違いは「集中できている」か、それとも「注意散漫」かにあります。
周囲やその場の状況を集中して探知できているか。
それともボヤーっと捉えていて、何の判断材料も得られていないか。
相手が見えているか、いないか
この両者の最大の違いは「集中できている」か、それとも「注意散漫」かにあります。
周囲やその場の状況を集中して探知できているか。
それともボヤーっと捉えていて、何の判断材料も得られていないか。
「人からどう見られるか」を気にするときはその「人」がしっかりとは見えていない。
自分が怖れている「誰か」や漠然とした「怖い人」が頭にあり、ただただ怖れ、萎縮し、全てを脅威だと警戒する状態。
注意を向けるべきはボヤーっとした「誰か」ではなく、目の前の「この人」です。
つまり「見ているか」「見えているか」が大事なんですね。
注意を払えば、気を配ったり気を回したり気を効かすこともできる。
気にする状態だと、ただただ防御するので精一杯になってしまう。
これは本当に辛く苦しい時間になります。
人の目を気にするのはトラウマ体験が原因
これらを解消するには、トラウマや挫折体験を改めて整理し、消化していくことが必要です。
そして自分以外の人間はただの脅威ではなく、一人一人人間であり、一人一人違った人間であるということ。
この事を腹落ちさせていくことが大切です。
こうした取り組みが上手くできれば、肩の力がスッとぬけて、視野が拡がります。
人と心の交流を実感でき、人と過ごす喜びを感じ始めます。
もう、怖いだけの他人という世界から卒業できます。
人と比べて自分を責めるクセから卒業したTさん
Tさん(50代女性)は幼い頃から人と自分を比べては、自分を責めて落ち込むというクセがありました。
自分はダメな人間で劣等生。
だから何をやっても失敗するし、自分がいること自体が周りの人の迷惑になる。
Tさんはそんな葛藤をいつも抱えながら一杯一杯で仕事もしてきました。
そんな自分から卒業したいという思いで本を読んだり、ネットで様々な情報を読みました。
そんなある日、Tさんは私のYouTubeを見つけ、動画を視聴したそうです。
「これは自分のことではないか」と思える内容であったり、「なるほど」と得心のいく内容だったといいます。
それでYouTubeにチャンネル登録し、メルマガにも登録をしました。
そしてYouTubeやメルマガを視たり読んだりしていくうちにカウンセリングを申し込まれました。
カウンセリングは初めてだというTさんは、最初は少し緊張と戸惑いを覚えたそうです。
しかし、程なくして自分が話したいことを自分の言葉で静かに語り始めました。
母親から自己否定されてきたのが原因
幼い頃から母に厳しく接してこられたこと。
その母から「あなたは何をやっても要領が悪い」とよく言われたこと。
母からのダメ出しが多く、それで自分自身も自分のことを「要領の悪いどんくさい人間」と思うようになったそうです。
学生時代もあまりクラスメイトと交流はできなかった。
自分なんて交流する価値がないと周りに思われているのではないかと思っていたから。
いつも心のどこかでオドオド、ビクビクしながら学校生活を過ごした。
そして就職をして働くようになったら、今度は職場でも萎縮した気持ちでずっといた。
自分がそこにいることで、周りの人は迷惑なのではないかとか、周りの人はキビキビ動くのに、自分はどんくさい・・・・
Tさんはずっと人と自分を比較して落ち込み、そんな自分を「ダメな人間」と責め続けてきたそうです。
カウンセリングが進んでいくうちに、Tさんはフッとある疑問を持つようになりました。
それは「なんで自分はいつも人と自分を比べるのか」ということ。
そして「どうしていつも私は自分を責めているのだ」ということでした。
カウンセリングの中で様々な経験やいろいろな場面について語る。
その内容はほとんどが「人と比べる」「落ち込む」「自分を責める」でした。
そんなことをいつも話している自分に、フッと疑問がわいたそうです。
自分が経験したことや自分の日常を話すうちに、その状況や自分自身を俯瞰し、客観視するようになったのです。
そして「なんで」「どうして」と考えていくうちに母親から「自己否定」を刷り込まれたのだと気づきます。
その時、Tさんは不思議と母親への怒りはわかなかったといいます。
自分を客観視(俯瞰)することでの気づき
母親が自分にやってきたことへの憤りよりも、自分自身の「真実」がわかったことの驚きの方が大きかった。
Tさんがよく使う「どんくさい」という表現もお母さんがよく自分に使っていたものだったのです。
Tさんはカウンセリングで様々なことを語るうちに、自分自身の真実が徐々に見えてきたと言います。
そしてTさんは、人との比較や自責を繰り返すこと自体を心底「ばかばかしい・・」と思うようになりました。
こんなもったいない、何の意味もない、百害あって一利無し・・なことをもう延々と繰り返すことは止めたいと言うようになりました。
カウンセリングを続けていくと、こうした転換期が訪れます。
それからのTさんは、憑き物が取れたようにというか必死さが取れ、自然体になっていきました。
使う言葉や表現も自然とニュートラルなものになり、語り口もゆっくり落ちついた様子に変わりました。
不安そうに、辛そうにされていた顔つきも穏やかで柔らかいものになりました。
職場にいる時の気持ちも全然変わったそうです。
以前のような無駄な緊張状態が解けたので、視野が拡がり、周りがよく見えるようになった。
そのせいで落ち着いてコミュニケーションが取れるようになり、仕事に対するプレッシャーも軽減したと言います。
Tさんはその変化を振り返り、嚙みしめるようにこう言いました。
「今までは自分なんてという主語でものを考えていました。でも、今は”自分は”という主語に変わったんです。」
「自分なんて」と「自分は」の違いは、Tさんにとって雲泥の差であり、別世界の扉を開けた感覚でした。
不安そうにうつむいてきたTさんが、その時からは真っすぐ前を向いて語るようになりました。
「本当にありがとうございました。何十年も苦しんできたんですけど、全てが自分にとって無駄ではなかったんだと思います」
Tさんは晴れやかな表情で静かにそう言いました。
今までの苦しみや苦難を無駄にするかしないか、それはTさんの選択次第ということ。
私はそう思いながら、Tさんのカウンセリングの卒業を喜び、彼女の人生のこれからが充実することを心から祈りました。
そして「自分次第だ」ということを誰よりも確信したのは他でもないTさんご自身であったと思います。
人から嫌われたくないと考えていたVさん
「人から嫌われないようにと、そればかり考えていました」
Vさん(50代女性)は、深い安堵の表情を見せながら、そう言いました。
Vさんはカウンセリングの初めの頃「生きづらさ」を訴えていました。
それも漠然としていて、何となく生きづらい感じが何十年も続いているというのです。
はっきりと説明できないが、ずっと虚しい感じや不安を感じていた。
仕事をするにも、いつも言い知れぬプレッシャーを感じてきた。
子育てでも、言いようのない不安を感じてきた。
とにかくやりづらい、生きづらい日々の中にいるというのです。
カウンセリングでVさんは、あることに気づいたという話をしてくれました。
ある日買い物に出かけた先で中学生になる娘さんと歩いている時でした。
娘と話が盛り上がり、話しの流れで娘さんが大きな声を上げたそうです。
Vさんはその時、咄嗟に周りを見たそうです。
娘の大きな声を「うるさい」と思われていないだろうか。
「なんだあの親子は、常識がないな」と責められはしないだろうか。
一瞬にしてそんな警戒心が出てきたそうです。
その時、Vさんは自分がいつもそうやって、何処にいても何をやっていても、人の目を気にして生きてきたのではないかと気づいたそうです。
その根底には「人から嫌われないようにしなければ」という思いがあることにも気づきました。
そして、そう思うようになったのは、母親のある言葉が影響していることにも。
なぜ人から嫌われたくないと思うのか
小さい頃から母親は「あんたは迷惑なんだから」とよく言われたそうです。
何か怒られるようなことを言われると、最後には「あんたは迷惑なんだから」と言われた。
それが母親の自分に対する口ぐせのようにすらなっていたというのです。
これはVさんに限った話しではありません。
幼い頃に自分に対して投げられた言葉や態度によって、人は自分への捉え方が固まってくる部分があります。
「ダメだ」「迷惑だ」「お前には無理だ」など、否定的な言葉を投げかけられ続けると、私たちは「自分はそうなんだ」と思うようになります。
これが「否定的な刷り込み」ですね。
それで大人になっても自分に対して否定的な捉え方から物を考えたり行動したりするので、いろいろと苦労を経験することになります。
Vさんも「自分は周囲にとって迷惑な存在なんだ」と刷り込まれ、常に「迷惑をかけないように」という判断基準で生きてきました。
だから「人から悪く思われたらお終いだ」くらいにも思ってきた。
そのため、いつも人の目を気にし、嫌われないことが最優先となっていたのです。
迷惑をかけないこと、人から嫌われないことが判断基準になってしまうと、自分がやりたいこともやらないし、自分の好き嫌いもわからなくなります。
失敗は許されなくなるので、チャレンジなことは全て避ける。
ひたすら人にいい顔をするので、自分というものが失われる。
それこそ、進路の選択から外食先のメニュー一つも決められなくなります。
Vさんはそんな悪循環に長年はまっていたのです。
そしてカウンセリングを続けていくうちに、ついにそのことに気づきます。
それが冒頭の言葉「人から嫌われないようにと、そればかり考えていました」につながります。
人の目を気にしなくなると周りがよく見える
自分の長年の生きづらさの根本原因に気づけたことで、Vさんはとても安堵した表情を見せました。
そしてそれ以降、自分の本当の気持ちに焦点を当てるように努め、徐々に人の目が気にならなくなっていきました。
人の目を気にしなくなると、周りがよく見えるようになります。
結果、Vさんは周りの人がそれほど自分を否定的に見ていなかったことにも気づきます。
「自分はいったい、これまで何と戦ってきたんだろうと思ってしまいます。
ホントに、自分が作り上げた否定的な妄想と戦ってきた、独り相撲を取っていたようなものです。」
半ば自分にあきれるような表情を見せたVさんですが、同時に真実を悟ることができた手応えをも感じているようでした。
このテーマ、本当に多くのご相談が今もあります。
あるんですが、相談された人たちが共通に言われることがあります。
それは次の2つのことです。
「人に相談するほどのことではないと思ったので、今まで相談してこなかった」
「相談しようと思ったが、いったい誰に相談すればいいかがわからなかった」
そう言った後に皆さんこうも仰います。
「もっと早くここ(カウンセリング)に来ていれば良かったです(笑)」
いえいえ、スタートするのに遅いなんてことはないんです。
その人がスタートしようと思ったところにスタートラインがありますから。
人の目を気にする日本社会
人の目を気にしてしまう。
人からどう思われるかがいつも心配でたまらない。
他人からの評価にいつもおどおど、ビクビクしている。
カウンセリングでもこのようなお話はよく出ます。
先日オンライン開催したテーマ別セミナー「自分に自信を持つ、自分が好きになる心理学」でも、このあたりの解決策についてお話ししました。
人からの評価に左右され悩んでいる人は実にたくさんいます。
ではなぜ、これほどまでに多くの人たちが人の目を気にして生きているのでしょうか。
人の目が気になるとか、人からどう思われてるかが心配ということは、人から悪く思われたり低い評価をされる事が嫌なわけです。
人から嫌われたくない、見捨てられたくないということです。
ということは裏を返せば「人から良く思われたい」のであり、「人から好かれたい、慕われたい」気持ちが あるということです。
私たちがなぜ人とのつながりをこのような形で求めるのかというと、それは「孤立すること」を恐れているからです。
一人ぼっちになっては生きていけないと考えるからです。
だから人と繋がるためにも、嫌われたり白い目で見られたくないと思うのです。
ただ、そのために「自分を押し殺すという選択しかできない」ところが問題です。
日本の社会はどちらかというと自分を押し殺して周りに合わせることを美徳としてきました。
「出る杭は打たれる」「世間様に迷惑をかけてはいけない」といった言葉がその典型です。
状況によってはこうした判断も必要になりますが、これらを状況判断の一部から「生き方の全て」に置き換えてしまった。
そこのところに日本社会を覆ている問題の深刻さがあると思います。
とにかく目立たないようにするとか、人と違うと少しでも思われないようにする。
時流に乗り遅れないようにしなければ。
こうした尺度しか持てなくなれば自分というものを打ち出すことはできなくなります。
だから、人と同じようにしていれば安心だ。
人から嫌われなければ間違いない。
そういう価値観や人生観が大半を占めるようになってしまいました。
一歩外に出れば常に「自分以外の人間はどうしているだろう」ということを気にし、自分の考えや自分のやりたいことは二の次にする。
そんなふうに毎日生きていれば、人の目が気になるに決まっていますし、常に自分を押し殺すしかなくなります。
そんな人生、生きていて何も面白くないのではないでしょうか。
人からの評価より自分を大事にする生き方を
「でも、実際に自分を出せば叩かれるじゃないか」
「異分子とみなされて仲間はずれにされるじゃないか」
そう思うかもしれません。
実際にそういう社会や集団は日本のあちこちにあります。
だから何も、そのような状況を無視して自分を打ち出すことはないと思います。
ただ、打ち出さなくても、打ち出せる自分を持つことは可能です。
自分なりの見方、自分なりの考え方、自分の好き嫌い。
そういうものは表明しなくても、自分の中で大切にすることはできるはずです。
そこまで捨ててしまう生き方は、もう魂の抜け殻のような人生ではないでしょうか。
私たちは自分の考えを大切にしたり、自分のやりたいことを大切にできるからこそ、自分のことが好きになれるのです。
自分を押し殺して人の顔色ばかりうかがっている自分自身を好きになれと言う方が無理でしょう。
また、そのような自分に自信を持つというのも無理というものです。
でも実に多くの人たちがそのような生き方に陥っているように私には見えます。
そろそろ自分自身を大事にして生きていってもいいのではないでしょうか。
その方が生きていて楽しいし、人生の中に感動体験も増えてきます。
カウンセリングやコーチングでは、自分を押し殺して生きてきた人たちが自分を大切にする術を得て、生きて行くこと自体を楽しめるようになります。
毎日が楽しいと自分の未来が明るく描けるようになってきます。
自分の人生を明るく彩れるのは自分自身だけだからです。
誰かが代わりに自分の人生を彩ってくれるわけではないんです。
だから、人の目なんか気にしても、百害あって一利なしです。
人の目を気にして身を潜めて生きることからは、そろそろ卒業しましょう。
人からの評価より自分自身を大切にする生き方にシフトして行きましょう。
自分を大切に思えることで、はじめて私たちは生き生きと生きることができるからです。
【まとめ】人の目を気にしない秘訣
人からどう思われるかが気になるのは、自分に自信がないからです。
自分で自分のことをダメな人間だと否定的にしか捉えられていない。
だから本当の自分を知られたくないという心理が働き、人の目や評価が気になるのです。
気にしない秘訣は、自分を肯定的に捉える捉え方をもつこと。
そして相手にしっかり関心をもって集中してコミュニケーションを取ることです。
人からどう見られるかを気にしている時は、実際の目の前の相手がどんな人でどう考えているのかが見えていません。
だから相手をしっかりと自分の目でみて、観察眼を働かせてやり取りをしていきましょう。
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