人が怖いと悩む人は、同時に自分に自信がないと訴えます。
これは様々なトラウマが原因になっているので、そのトラウマ(心の傷)を解消することで解決します。
人も怖くてなおかつ自信が持てないというのは、生きることそのものが日々辛いものになります。
克服すれば、仕事するにも人と話すにも気持ちは楽になり、仕事のパフォーマンスも上がります。
さらには自分を好きになり、自己肯定感が出てくるので、生きるのが楽しくなります。
【筆者プロフィール】
心理カウンセラーとして6000件以上(2020年4月現在)のカウンセリングを実施。
5年間にわたりスクールカウンセラーとして教育現場の問題解決にあたり、現在も個別に教育相談を受ける。
大手一部上場企業を始めとした社員研修の講師として10年以上登壇し、臨床カウンセラー養成塾を10年以上運営。コーチとしても様々な目標達成に携わる。
著書「感情は5秒で整えられる(プレジデント社)」は台湾でも出版された。
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人って怖いの?それとも優しいの?
カウンセリングでは人間関係に関するご相談が非常に多くあります。
そうしたご相談を受けていると人が怖い」という訴えをよく聞きます。
人が怖いと思ってしまい積極的に人と関われないという悩みです。
人と積極的に関われないというのは、仕事をしたり社会生活を送る上では非常に困る話です。
なぜなら、私たちの社会は人との関わりによって動いているからです。
その関わりを絶つということは、社会とのつながりを絶つということになってしまいます。
ですが人との関わりに消極的にならざるを得ない人はとても多くいます。
消極的になる原因の一つが「人が怖い」という捉え方になります。
この場合の人が怖いとは「誰もが怖い人間である」と思ってしまうことです。
では、そもそも人間というのはどのような存在なのでしょうか。
怖い存在なのか、それとも優しい存在なのか、いったいどちらなのでしょうか。
この問いにしっかりと答えるためには、この問い方の間違いに気付くことが必要です。
「人は怖いものだ」という過度の一般化に気づく
そもそも「怖い存在か、優しい存在か」という問い方が間違っています。
なぜなら人間にはいろいろな人がいるからです。
またひとりの人間でも、いろいろな感情や態度を持ち合わせているからです。
その人の人間性という意味で怖いなという人もいます。
でも一方で、人間的に優しいなという人もいます。
まずここで「人によるのだ」というのが回答の一つになります。
続いて、同じひとりの人間でも常に同じ態度や感情で居られるわけではありません。
優しい人間でも怒ったりすることはあります。
怖い人間でも、見せかけの優しさを演じる事はできます。
ですから、そもそも人間とは怖いのだとか優しいのだとか、
そこの部分で一般化しすぎると目の前の人を見誤り、人間関係が築けなくなってしまいます。
怖いか優しいかは「人による」し「事と次第による」と言えるわけです。
ということは人間関係で一番大切なことは「見極め」とか「状況判断」ということになります。
「人が怖い」という訴えは「人間はそもそも怖い存在だ」という過度の一般化によるものです。
過去にそうとしか思えなくなるような経験と学習をしてしまったのが原因です。
ですが、過度の一般化によって人間関係を築く上で一番大事な「見極め」や「状況判断」を放棄してしまう。
これが一番問題となるわけです。
下記の動画解説は参考になります。
【解説動画】人付き合い、人間関係のコツは初対面の相手に0点をつけること
トラウマが目の前の相手に対する判断を狂わせている
特に、過去人間関係で傷ついた人は、どうしても人に対して
防衛的、否定的な反応が先立ちます。
そのため、「見極め」や「状況判断」ができなくなってしまうのです。
人間関係がうまく築けないというのはこうした反応による苦しみなのです。
ですから大事なのはまず、人間が怖いかどうかは
「人による」「事と次第による」ということを腹落ちさせることです。
この前提があれば、目の前の人間はどうか、この状況ではこの人はどうかという
「見極め」や「状況判断」に意識が向けられます。
あとはさまざまな人間関係を経験すればするほど、
この「見極め」や「状況判断」の精度が上がっていきます。
怖れや不安、焦り、あるいは過度な承認欲求によって、自分の目を曇らせないことが大切です。
自分の目でしっかりと物事を見定める。
そういう意識が人生を開いてくれることが往々にしてあるんですね。
「強くものを言われると怖い」というPさん
「強くものを言われると”怖い”と思って萎縮してしまうんです」
Bさん(20代女性)は、自分が不甲斐ないという顔をして、そう打ち明けてくれました。
とある企業の営業事務で働くBさんは、なかなか職場の雰囲気に馴染めないと言います。
営業の人たちは比較的元気もよく、声も大きい人たちが多いそうです。
そして、事務方には大雑把な報告の仕方が目立つので、
営業事務であるBさんは、それをフォローする必要があるとのこと。
つまり、Bさんの方から営業の人たちにいろいろ働きかけなくてはならないわけです。
ところが、Bさんは元々、自分から人に声をかけるのが苦手。
とくに威勢よく話しかけられると、なぜか「怖い」と感じてしまい、
心身共に萎縮する感じになって、上手くコミュニケーションが取れなくなるのです。
そうです、これがBさんの職場での最大の悩みです。
営業マンの勢いに圧倒され気味で、自分の仕事が十分にできないのです。
そんな不甲斐ないことではダメだと悩んできたのですが、
一人ではどうしても解決できずにカウンセリングを受けようと思ったのです。
実は、カウンセリングではこうした悩みの相談がとても多いんです。
ほんとに多いんですよ。
だから、私もかなりこのテーマのカウンセリングをさせて頂いてますね。
ではそもそもなぜ、威勢よく、あるいは強くものを言われると「怖い」と感じてしまうのでしょうか?
「威圧されてきた」というトラウマ
多くの人たちは、幼いころから強くものを言われて萎縮する経験をしてきています。
それが父親や母親、祖母や祖父だったり、学校の先生、部活の指導者だったり・・・
中には学生時代にいじめや生徒同士のトラブルがきっかけでという人もいます。
だいたい子どもの頃に強くものを言われる時というのは、叱られたり怒られたりする場面です。
つまり、ある意味自分(の態度・行動)を否定される場面ですね。
ところが、注意の仕方が不適切だったり調子が強すぎたり、強く言われる頻度が多かったりすると、
子どもは自分の態度・行動だけでな「人格を否定された」と受け取ってしまいます。
そしてさらにそんな経験を繰り返すとやがて
「自分は存在してはいけないんだ」と学習する場合もあります。
Bさんの場合は「存在してはいけない」とまでは学習していませんでしたが、
「自分の人格を否定された」と感じてしまうような接し方はされてきました。
父親から何かと厳しく怒られることが多かったそうです。
「だから私は、いつの頃からか、父親の機嫌を伺って生きるようになりました」
その結果、Bさんはいつの間にか「先ず相手の機嫌を損ねないこと」を最初に意識するようになったそうです。
先ず、相手の機嫌を損ねないように・・が最優先になっている
初めて会う相手でも、何度も会う相手でも、会った瞬間から
先ず相手が機嫌を少しでも損ねないようにという態度になるのです。
そして、相手は怒っているつもりは全くなくても、少しでも強い声の調子でしゃべると、
それだけで昔の感覚が蘇り、自分を否定されたと捉えてしまうのです。
機嫌を損ねないようにという警戒感と、強い調子に対する否定感。
この両者が相まって、Bさんの心のなかは「怖い」という感情でいっぱいになってしまうのです。
なぜカウンセリングで人が怖くなくなったのか
さて、カウンセリングに通ううちに、Bさんはこうした自分の心理的な働きを自覚するようになります。
それは同時に、自分の中で相手の話を聞くことを邪魔する要素に気づいたことにもなります。
そして、本当は相手がどういうつもりで話しているかに注意が向くようになります。
そう、相手の様子を過剰に怖れるのではなく、相手が伝えようとしている「こと」に
しっかりと注意や意識が向くようになっていきました。
すると、Bさんは営業の人たちと以前よりもかなりしっかりとコミュニケーションが取れるようになりました。
お陰で仕事のミスが減り、営業の人たちとも普通に会話を楽しめるようになりました。
「以前よりも、仕事(職場)が楽しいと思えるようになった」とも話すようになりました。
2週間に1回のペースでカウンセリングを続けていたBさんは、
結局5回目のカウンセリングで卒業することができました。
約3ヵ月のカウンセリングを終えたBさんは、最後にこう話してくれました。
「カウンセリングでは、途中、自分から迷路にはまりそうになりましたが、
そこでしっかりと悩み、考えたことが、逆に良かったのだと思います。
本当に、自分がいかに目の前のことが見えていなかったかがわかりました。
あと、自分が多くの思い込みに気づいていなかったことも。
これが分かったことが大きかったですね」
Bさんが、私が思った以上に早くカウンセリングを卒業できたのは、とにかく素直だったことです。
上手くいくかどうかわからなくても、カウンセリングで気づいたことは、
とにかく実行に移そうというひた向きさがありました。
この素直さ、ひた向きさは、結果的に思い切りの良さにもなったので、
Bさんは私の想定を超えるスピードで卒業していきました。
「人が怖い」は、もう傷つきたくないという防衛反応
カウンセリングでもそういう取り組みをこれまでたくさんやってきました。
「人が怖い」と思う人に共通するのは、自分がいつも怒られるのではないか?
いつ批難・攻撃を受けるかわからないという緊張状態でいることです。
なぜそれほどいつも警戒心が強くなってしまうのか?
それは、過去に誰かから避難・攻撃を受けた経験があるからです。
その時、著しく心が傷ついたことで、もう二度とそんな思いをしたくないとなり、
それでいつも「傷つかないように」が最優先で生きてきたのです。
あるいは、長期間にわたって自分を否定されるような状況や環境で過ごした場合ですね。
こちらも知らず知らずのうちに自己否定感と他者不信感に苦しむようになります。
本当の自分を見せたら、即攻撃されるかもという警戒心につながります。
こちらの記事も参考にしてください↓
トラウマが目の前の相手を見えなくさせる
そもそも誰もが傷つきたいなどとは思わないし、
そんな経験があれば警戒心が働くのは無理もないこと。
ただ困るのは、どんな状況であっても警戒心のスイッチが入り、
ずっと切れずにいるということです。
これではいつも緊張状態になり、人と会うだけでヘトヘトに疲弊します。
さらにはまともに相手とコミュニケーションも取れないでしょう。
相手をとにかく怖い人間としか認識できないので、
相手にまっすぐ、そしてしっかりと関心を向けることができません。
それは目を閉じて食事をしようというのと同じ。
どうお皿が並んでいて、そのお皿にどんな食事があるのかも見えないので、
まともに食事ができない。
それは相手がどんな人間かも把握できず、何を話しているかも入ってこないで
会話を続けようとすることですので、当然無理があります。
結果、相手と何を話したのか正確に記憶もされていない。
相手がどういう人間性の持ち主なのかもわからないまま。
だからいくら接触しても会話も関係性も深まらないことになります。
職場の人間関係や仕事そのものに影響も
仕事でこうしたジレンマに陥ると、仕事そのものに大きな支障が出ます。
なかなか仕事が覚えられなかったり、同じミスを繰り返したりします。
職場の人たちと満足に意思疎通ができないので、仕事どころではない状況になっていきます。
それに人間関係が築けないので、一種の孤立感や孤独を感じることもあります。
では、この状況をどう打開できるのでしょうか。
どうすれば「人が怖い」を克服できるのでしょうか。
「人が怖い」この克服は「今ここへの集中」がカギだった
先ずは目の前の人間、一人一人にしっかりと目を向けること。
一人一人にそれぞれ、しっかりと関心を向けることでしょう。
そうすることで、目の前の人間は必ずしも自分にとっては脅威ではないということが見えてきます。
先の食事の例でいえば、目の前の食事を自分の目でしっかりと見ることです。
そして一つ一つの食事を観察し、自分の舌でじっくり味わうことで、
目の前の食事というものがどういうものかを「実感」できます。
人間関係も同じです。
目の前の人がどういう人で、どんなことをこちらに投げかけているのか。
そもそもそれをしっかりと自分の眼と耳と肌で感じることが大切です。
怖いかどうかを判断するのは、それからになります。
ただ、この「怖い」という反応は無意識に出てきます。
気がつくと相手を前に目と耳をふさいでいるように心が閉ざされてしまうのです。
だからこそ、意識的に「自分の眼と耳と肌感覚」で目の前の人を捉える意識が大事になってきます。
わかりやすくいえば、もっと目の前の相手を見てみることです。
目の前の相手にしっかりと関心を寄せる。
そして、その人の話にしっかりと耳を傾けてみる。
ではどのくらい傾けるかというと、相手の言葉の一言一句を正確に全て聞き取る。
このくらいの注意、集中を保つことになります。
それこそ、好きな映画やドラマを夢中になって観るのと同じエネルギーを使います。
コミュニケーションが上手な人は、瞬間的にこのスイッチが入ります。
ですから普段そのスイッチが入らず、別のスイッチ(怖い)が入ってしまう人は、
ことさら意識して別のスイッチを入れるようにトライします。
何度もやっているうちに、少しずつできるようになります。
(一人では難しければ、カウンセラーにサポートしてもらいましょう)
いずれにしても、目の前の人、目の前のことにいかに集中できているかいないか。
仕事や人間関係はここで大きな差がつきます。
いろいろ遠回りせず、目の前にヒントと答えがあるわけですから、
あとはそこに集中して取り組めばよいわけです。
【動画】【広場恐怖症】電車が怖い、電車に乗れない心理と解決法~カウンセリングで出来ること
最後に「広場恐怖症」「電車に乗れない」の克服について短い動画で解説しています。
ぜひご覧ください。
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