劣等感(コンプレックス)を克服する(なくす)には


劣等感(コンプレックス)をなくすカギは、劣等感の正体をきちんと理解することです。

どのような劣等感で、なぜ生まれたのか?

先にそこの自己分析をしっかりと出来るからこそ、ではどうすれば良いのか?がわかります。

ですが多くの人たちが最初に「ではどうすれば良いのか?」を考えてしまうので、迷路にはまってしまうのです。

そこで、劣等感を克服するポイントと、今回はわかりやすくするために3つの事例を紹介しながら解説します。

なぜ劣等感を感じるのか?

Skypeや対面によるカウンセリングには、毎回様々な方がいろいろなテーマのご相談をされます。

今回は自分に劣等感を克服したいという相談について書いてみます。

劣等感をもつようになる原因は、それこそ人それぞれ。

その中でよくある原因の一つに、子どもの頃のある経験が起因している場合があります。

例えば、お父さんが怒りっぽい人で、子どもの頃、それにずっと気を使って過ごしてきたという場合です。

お父さんが急に切れたりする。

それこそ、いつ、どんなことがきっかけで怒り出すかわからない。

だから、いつもお父さんを刺激しないように過ごしてきたというケースです。

そうすると、その人は子供時代に、自分の気持ちをずっと押し殺して過ごすことになります。

自分の気持ちを押し殺す。

これはある意味、強烈な自己否定行為になってしまいます。

自分の正直な気持ちは、表に出してはならない。

だから常に抑え続けていなければならない。

しかもこれは、意図して、意識してというよりも、どちらかというと無意識に、気づかぬうちにという感じです。

そういう生活をずっとしていくと、やがて自分の気持ちが「良くないもの」という認識につながります。

そうなると、自分の考え、意見、判断、感じたこと、そして自分の感情や気持ちそのものを否定するようになります。

それはやがて、自分の存在そのものの否定につながったり、自分の感覚が信じられなくなったりすることもあります。

また、自分の気持ちをずっと押し殺してくると、自分の気持ちが何なのか、わからなくなってくることも。

自分の本当の気持ちがわからない。

今、自分が何をしたいのかもわからない。

そういう状態になっていくこともあります。

子どもの頃、こうして自分の気持ちを押し殺すに至る状況は、他にもいろいろ考えられます。

両親の夫婦仲が悪い場合も、子どもは自分の気持ちを抑えます。

学校でいじめなどに逢う場合も、自分の気持ちを抑えます。

つまり、自分の気持ちを自由に表せない環境に置かれると、私たちは自己否定を強くしていく可能性が高くなるんです。

逆にいえば、自分の気持ちを自由に表すことが許されれば、私たちは自己肯定感を高めることが出来るんです。

自分の正直な気持ちを否定され続ける環境では、「本当の自分は受け容れられない存在だ」と学習してしまいます。

Lさん(40代女性)は、職場の人間関係に悩んできました。

仕事を頼むことができなかったり、
必要な時に周囲に相談できないと悩んでいたのです。

いざ、話しかけようと思うと、躊躇します。

これでは日々の仕事でも支障が出てしまうため、Skypeカウンセリングで解決したいと思ったそうです。

話を聞いていくうちに、Lさんは子供時代のことを思い出しました。

お父さんが厳しくて、すぐに怒る人だったそうです。

それで、家族みんながお父さんを怒らせないようにと、まるで息を殺して過ごすような日々だったといいます。

当然、自分の気持ちを正直に表すこともできず、ずっと自分の気持ちを抑え続けて過ごしました。

その結果、大人になっても自分の気持ちに自信がもてず、何事も消極的になってしまったのです。

カウンセリングが進むにつれ、Lさんは自分を一つ、またひとつと受け容れられるようになっていきます。

私たちは自分の受け容れられている部分にtついては人に見せることができるんですね。

Lさんは徐々に、仕事を頼んだり相談したりできるようになっていきました。

また、Lさんはその過程で大切なことに気づきます。

Lさんは気づかぬところで、気持ちを押し殺していた自分自身をずっとずっと責め続けていたのです。

ダメな自分だと、情けない自分だと、永い間、心の中で責め続けていたことに気づいたのです。

「自分を押し殺していたのは、自分が悪いからじゃない」

「小さな子供なりに、必死で生きていこうとしていたんだ」

「自分はダメなんかじゃない。今できることをやっていこう」

そんな風にLさんの気持ちは変化していき、さらに自分自身を受け容れられるようになります。

そこで、職場で勇気を出して、周囲に声をかけようとしました。

その試行錯誤を通して、意外にも周囲が自分に温かく接してくれてきたことにも気づきました。

そう「自分はダメだ」という自己否定感は、周囲のそんなまなざしすら、見えなくしていたのです。

そのことに気づけたLさんは、必要な場面で仕事をで頼んだり相談できるようになりました。

カウンセリングによってLさんが得たものは自分に自信を取り戻す以上のものだったようです。

劣等感をなくすには

誰もが、大なり小なり劣等感を持っています。

ですから、劣等感があること自体は問題になりません。

問題になるのは、その劣等感に振り回され、自分を見失うのか?

それとも、劣等感と向き合い、真の自分を発見できるのか?

つまり、劣等感を力に変えられるかどうかということです。

困難な状況やトラブル、理不尽な経験もそうですが、苦しみを自分の力に変えられたら、人生にそれだけ厚みが出てきます。

悲しみや苦しみ、寂しさ、やりきれなさを深く経験し、そこから自分の人生観を豊かなものにする。

「生きる」とは、この繰り返しなのではないかとすら思います。

劣等感も同様で、劣等感から何を学べるかで、その後の人生が変わります。

最終的には「この劣等感のおかげで、今の自分がある」と言えたら、最高です。

ところが、そこに行くまでは困難な道のりを歩むことになります。

そももそも、劣等感はなぜ生まれるのでしょうか?

生まれたばかりの赤ちゃんには、劣等感はないはずです。

苦手な事、嫌いなことなどの特性はありますが、劣等感はないはず。

劣等感は後天的な経験から生まれます。

自分自身を肯定できなくなる経験をすることで、強い自己否定を起こすのです。

その自己否定が劣等感だと思ってもらっていいでしょう。

一言でいうと「こんな自分はダメ(な人間)だ」という捉え方ですね。

自分に対する捉え方が否定的なところです。

私たちは、自分に対して否定的な捉え方があると、仕事や人間関係、子育てなど、人生の様々な場面で葛藤を経験します。

ですから、その否定的な捉え方が肯定的になることで、劣等感が自分の力に変るといえます。

では、否定的な捉え方は、どのように肯定的に変わるものなのでしょうか?

数年前のカウンセリングでのこと。

30代半ばのHさん(男性)は、強い劣等感をもっていました。

子どもの頃にいじめにあい、それが原因でした。

いじめは自己を強烈に否定される経験になります。

だから、「いじめられる自分はダメな人間だ」と、自分自身が自分を責めるという苦しみも経験します。

同時にいじめた相手を通して他人に対しても否定的になりやすいのです。

他人は自分にとって脅威となる存在で信用できない。

そういう他者に対する捉え方も生まれてしまいます。

劣等感を克服するためには、自己と他者に対する否定的な捉え方。

この両方の捉え方が変わる必要があります。

そしてこの捉え方は、どちらか一方がしっかりと変わると、もう一方の捉え方も変わるのです。

つまり、自己に対する否定的な捉え方が肯定的になると、他者に対する否定的な捉え方が肯定的になるということです。

自分に対する捉え方と他人に対する捉え方とは、表裏一体なところがあるんです。

Hさんも、カウンセリングを通して自分の劣等感についていろいろ話し、考えました。

そして、過去のいじめの際の自己と他者に対する捉え方が少しづつ変化していきました。

カウンセリングを通して、Hさんの物事の捉え方に対する「視野」が広がっていったからです。

感情的に否定的な捉え方をしていたものが徐々に理性的に肯定的な捉え方に変っていったのです。

だから劣等感は中途半端に考えるのではなく、しっかりと向き合って捉え直す作業がとても有効なのです。

Hさんはその作業を通して、一つまた一つと自分を受け容れていったのです。

過去について語るということは、過去の嫌なことを思い出さなければなりません。

ですから、専門的な援助のもとに行われることが望ましいといえます。

その上で過去を語ることで、過去に対する捉え方も変わります。

過去(に起きた事実)は変えられませんが、過去に対する捉え方は変えることができます。

劣等感を克服する秘訣とは

自分に自信がもてないと、いろいろな悩みが生まれます。

例えば、自分の判断に自信がもてず、物事が決められない。

人からどう見られているかが気になって、心が萎縮する。

失敗するのが怖くて、積極的に行動できない。

こういった悩みが二次的に発生します。

このような状態だと、人間関係でも悩みが出てきます。

仕事も思うようにできなくなることも多いでしょう。

仕事、そして人間関係というと、生活の大半を占めるもの。

この両方で悩んでしまうのは、かなり辛いことでしょう。

では、どうすれば自分に自信を取り戻せるでしょうか?

結論から言ってしまうと、行動することなんです。

様々な行動からいろいろな経験を積んでいくこと。

その経験が自分の確かな自信となりますし、経験を積み重ねることで、さらに自信が深まります。

ところが、自信がもてない時というのは、その行動を起こせない状態であることが多い。

それは前述のように、人の目が気になったり、失敗が怖かったりするからです。

そのせいで、行動が起こせず、自信獲得に必要な経験も積むことができない。

この悪循環のジレンマ。

自分に自信が持てない人には、こうした苦労があるんです。

数年前カウンセリングに通っていたFさん(30代女性)。

Fさんは、転職して2年目の会社で営業事務をしていました。

自分に自信がもてず「職場の人間関係」が相談内容でした。

営業の方々と上手くコミュニケーションが取れないと悩んでいたのです。

営業の人たちは結構元気がある人が多いので、
さんはその勢いに押されている部分もありました。

また、幼い頃にいじめを受けた経験もあったそうで、そこから「自分はダメな人間だ」という思い込みが染みついていました。

いじめを受けた人によくあるのですが、当人はいじめを受けたのは、自分がダメな人間だからだ・・・と思いがちです。

しかし、いじめはやる側の問題なので、そう結びつけてしまわない方がいいでしょう。

例えば、何かをやるのが人より遅いとか、会話が苦手だといったこと。

それは自分が克服したいと思うテーマにはなっても、人からいじめの材料にされるものではありません。

勝手に向こうがこじつけてきたことです。

ここを切り離して考えないと、自己否定感に悩まされます。

とはいっても、Fさんは自分がダメな人間だという思い込みがありました。

そこで、カウンセリングの中では、そこを一緒にじっくり考えました。

人間には、不思議なところがあります。

自分の苦しみ、劣等感についてじっくりと向き合えると、却って気持ちが楽になっていくものです。

私たちは自分が何を怖れ、なにを嫌がり、何が苦しいのか?

そのことがきちんと見えてくると、恐れや嫌悪、苦しみが軽減していくんです。

Fさんもまさにそうでした。

自分と向き合っていく中で、物事に対する捉え方のクセに気づきました。

営業の人たちは積極的な人たちなので、消極的な自分をダメな奴と思っている・・・のではないか・・・

こういう思い込みを、無意識に持っていることに気づきました。

実際、営業の人たちに確かめたわけではありません。

彼らがそう感じているという実感が、Fさんの中にある・・わけでもないんです。

でも、Fさんはそう捉えていたんですね。

その捉え方が思い込みで不確かだと感じ始めたFさん。

徐々に営業の人たちとコミュニケーションを始めます。

すると、Fさんの思いこんでいたものとは違い、営業の人たちは普通に応じてくれたそうです。

「自分で勝手に壁を作っていたんです」

Fさんはしみじみと、そう言いました。

そして、その後、3回カウンセリングに来られ、Fさんはトータル11回で、カウンセリングを卒業されました。

では、Fさんはなぜ、自信のなさを克服できたのでしょう?

それは、思い込みに気づいたことで、行動を起こせたからです。

Fさんは、営業の人たちとのコミュニケーションを、自ら取ろうとしました。

その結果「大丈夫だ」という経験を積めました。

私たちの中には、前に進もうという力が眠っています。

その力を呼び起こせれば、行動につながり、自信を取り戻せます。

物事の本質や真実が見えてくると、どうやらその力は立ち上がってくるようです。

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心理カウンセラー鈴木雅幸(コーチ・企業研修講師)のプロフィール

心理カウンセラーとして6000件以上(2020年4月現在)のカウンセリングを実施。
5年間にわたりスクールカウンセラーとして教育現場の問題解決にあたり、現在も個別に教育相談を受ける。
大手一部上場企業を始めとした社員研修の講師として10年以上登壇し、臨床カウンセラー養成塾を10年以上運営。
コーチとしても様々な目標達成に携わる。
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