自分を受け容れる(自己受容)とはなにか?
実は自己肯定というのは自己受容の邪魔になることがあるって知ってました?
自己肯定と自己受容の違いを理解していないと、いつまでも自分を受け容れることができません。
自分に自信がなくても自己受容はできる。
今回はあるカウンセリング事例をもとに心理カウンセラーが解説します。
【筆者プロフィール】
心理カウンセラーとして6000件以上(2020年4月現在)のカウンセリングを実施。
5年間にわたりスクールカウンセラーとして教育現場の問題解決にあたり、現在も個別に教育相談を受ける。
大手一部上場企業を始めとした社員研修の講師として10年以上登壇し、臨床カウンセラー養成塾を10年以上運営。コーチとしても様々な目標達成に携わる。
著書「感情は5秒で整えられる(プレジデント社)」は台湾でも出版された。
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自分を受け容れられないMさん
「自分のことが受け容れられないんです」
Mさん(40代 女性)は、そう呟くと、黙ってしまいました。
Mさんは、中堅企業で経理の仕事をしていました。
職場での人間関係に日々、ストレスを感じる毎日です。
経理に関することを他の社員に確認しなければならない時、同じ経理の部署の女性に、仕事を頼まなければならない時。
そういう瞬間に大きなストレスを感じるのだそうです。
特に仕事を頼まれたけど、断らなければならない場面。
これが最もストレスで、時々断れずに引き受け、後で大変な思いをすることも。
なぜこうした場面がストレスになるのか?
それは、Mさんが自分のことを否定的に捉えているからでした。
自分は仕事が出来ないダメな人間。
迷惑ばかりかけて、居てはならない人間。
そんな風に自分のことを思っているのでした。
過去のトラウマ経験による自己否定、自分に自信がもてない
原因は、母親から「あんたは何をやってもダメだね」という言葉をよく言われてきたこと。
そして、小学校と中学校でいじめを受けてきたことです。
そうした経験によって、自分は生きていて良いのか?
自分は何をやっても人に迷惑をかけているのではないか?
そんな捉え方が定着してしまったのです。
カウンセリングを続けていくうちに、Mさんはこうした自分の捉え方とその原因に気づきます。
ところが、捉え方を変えることは、なかなか出来ませんでした。
そして冒頭の呟きにつながります。
そして、Mさんは続けて、こんな質問をしました。
「鈴木さんは、どうやって自分を受け容れることが出来てるんですか?」
Mさんはとても真剣なまなざしで、そう質問したのです。
自己受容とは自己認識のこと?
私は、参考になるかわかりませんがと前置きした上で、こんな風に答えました。
「自分はこういう人間だということに、いいとかダメだとかあんまり思わないんです。
ただ、自分にはこういうところがあるという風に認識をするに留めています」
実際はもう少し説明しましたが、まとめるとこうなります。
すると、Mさんにはこの答えが、妙に「はまった」ようでした。
ハッとしたような表情を見せた後、Mさんは、少し間を置いてからこう言いました。
「私は、自分で勝手に、ここはダメなところだと決めつけてしまっていたのだと思います。
こういうところがある。だからダメなんだと・・・
でも『だから』の根拠があるわけじゃないんですよね。」
Mさんは、半分独り言のように呟きました。
私たちは変化を怖れる
自己否定的な捉え方が染みつくと、何か事があるたびに、やっぱり自分はダメな人間なんだと結びつけてしまいます。
私たちは自分がもっている捉え方を、たとえそれが根拠のない非合理なものでも、
根拠ある捉え方だと思いたくなります。
なぜなら、未知の捉え方を持つことを怖れ、変化することを怖れるからです。
今の捉え方でも生きるのは辛い。
でも、もし違う捉え方をしてもっと辛くなったらどうしよう。
そう不安になるので、今のままでは苦しくても、なかなか自分や状況を変えようとはしないのです。
Mさんはカウンセリングの対話を通して、過去に母親から刷り込まれた捉え方が、母親の人間性の未熟さからきたものであること。
そして、いじめを受けたのは自分がダメだからではなく、いじめる側の心の問題であったのだということ。
このことに気づき始めていたタイミングでした。
おそらく、そう気づき始めていたことで、私に対しての質問が出て私の回答がスッとはいったのだと思います。
こうしたやり取りによって気づきが生まれるには、タイミングというのも大事になります。
自己受容は自己肯定ではない
Mさんはその日のカウンセリングから、精神的にとても楽に過ごせるようになったといいます。
そして、職場での人間関係でも、ストレスが少しずつ和らいでいったそうです。
経理の仕事で他の社員に質問をしたする。
他の社員に仕事を頼んだり、逆に断ったりする。
そんな場合でも相手をよく観察し「タイミング」を考え、「ものの言い方」を工夫すれば大丈夫。
Mさんはそうしたことも経験から学んでいきました。
自分を受け容れるというのは、肯定することとは少し違います。
肯定の裏には、常に否定が見え隠れします。
そうではなくて、肯定も否定もしない。
ただ、そういう人間なんだと知ること、認識をすることなんです。
仕事でミスしたら自分を責めるまえに知恵と工夫を使う
私の場合、事務仕事がとても苦手です。
時々間違いがあって、お客様から優しく指摘されることも(笑)
鈴木さん、請求書の宛名が違います。
鈴木さん、日付が去年のものになっています。
こんなことが時々あります。
こういうところは気をつけようと思いますし、もちろん即対処して、丁寧にお詫びします。
しかし、その事で自分はダメな人間、無能な人間だとは思いません。
ただ、そういうところが苦手だという傾向があると認識をする。
だから、間違えないように気をつけたり、工夫をしたりすることにエネルギーを使います。
そしてその方が後々ミスが減ります。
自己否定に使うエネルギーを必要な思考や作業に使えます。
そのため、結果として自分の力もより発揮出来ます。
「だから自分はダメな人間だ」
「やっぱり自分は居てはいけない、価値がない」
これらは、あくまでも「自分が自分に語りかけていること」です。
もちろん、こうしたクセはすぐに直せるものではありません。
先ほどもお伝えしたように、そうやって成り立ってきてしまったものですし、変えることへの怖れが壁となるからです。
しかし、そこを越える作業を続けていけば、Mさんのように克服出来ます。
あきらめずに取り組み視野が拡がったMさん
Mさんはカウンセリングの最後の回に、自分が取り組んできた過程を、こんな風に振り返りました。
「あの頃より気持ちがすごく楽に過ごせています。
周りもよく見えるようになったし、周りの人たちは、自分が思っているほど自分に否定的ではなかったということもわかりました。
今は、人が怖いという感覚も消えました。
あきらめず最後まで取り組めて、本当に良かったです。」
実はMさん、カウンセリングに通っている最中に「通っていることに意味があるのか?」という迷いが生じたそうです。
この迷いは、多くのクライエントの皆さんがぶつかる葛藤でもあります。
しかし、新しい人生は、そうした壁の向こう側にあるものなのかもしれませんね。
【動画】自信が無くても生きていける?
自分を受け容れるという際に、自分に自信がないというテーマにもぶつかります。そこで「自信がなくれも幸せになれる」ということを心理カウンセラーが動画で解説しています。
ぜひご覧ください。
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