過去のトラウマと向き合い克服するには


トラウマとは心の傷であり、強い恐怖や精神的なショックによる影響が残ってしまうことです。

そのトラウマを克服するには、トラウマによって出来た狭い視野と偏った捉え方を見直していく取り組みが必要です。

狭い視野が広がり、新たな視点を得る。

偏った捉え方が多面的でバランスの良い捉え方に変わる。

そうなればトラウマを克服できます。

トラウマがなぜ生まれ、いかに克服できるかについてわかりやすく書いてみます。 

なぜトラウマができるのか?

一言でいえば、自分自身を強烈に否定される経験をする。

身の危険、命の危険を感じる経験をする。

そのために、精神的なショックや恐怖が心に刻まれてしまうためです。

私たちは深く傷つくと、もう二度とそんな思いはしたくないと思います。

そのため、常にそうした状況を回避しようと警戒態勢が解けなくなります。

ですから、その時々の状況に僅かでも自己否定や恐怖を覚える可能性があると捉えてしまうと、警戒スイッチが入ってしまいます。

代表的な経験はいじめ、執拗な嫌がらせ、人間関係のトラブルです。

そこで自分(の存在)を強烈に否定されることで、胸を張って生きていく気持ちが奪われてしまうのです。

また、こうした経験によって自分自身に対する捉え方(自己概念)が著しく否定的になります。

こうして人から否定される自分は存在する資格がないのだと、自分で思ってしまうようになります。

自分の存在意義や価値は、本来自分自身が築いていくものです。

しかし、他者から理不尽に自分を否定されることで、私たちは自分の存在意義や価値を築く意欲を失います。

また、強烈な自己否定を受ける経験によって、他人は自分にとって脅威(の存在)であるとインプットしてしまいます。

そのため、自分を信じられないばかりか、他人をも信じられなくなります。

人に心を開けなくなり、人間関係そのものに常に警戒感を抱くようにもなります。

トラウマを克服するには

トラウマを克服するには、こうした自己否定と他者不信を克服する必要があります。

これらに共通するのが狭い視野と偏った捉え方です。

これ以上傷つかないようにしたいために、自分の殻に閉じこもるしかなくなるわけです。

視野を広くし、捉え方のバランスを取り戻すには、新たな経験が必要です。

人は経験によって視野を拡げ、捉え方を学習していくからです。

人間関係によって受けた傷は、人間関係によって癒されます。

つまり、人間関係は傷つけられるものだという捉え方を改める。

人とつながることに癒しや喜びといった肯定的な面があることに気づくことです。

人間関係の肯定的な面に視野を開き、肯定的な捉え方の引き出しを増やします。

この作業が改めて人間関係で喜びや癒しを得る経験をするしかありません。

こうした経験学習こそ、傷ついた人には説得力を持ちます。

怖くない、信じようと言葉でいっても、傷ついた心はなかなか反応しません。

しかし、実際に「怖くないんだな」「信じられるんだ」という経験、つまり実感を持てたとき。

私たちの心は動いていくものなのです。

カウンセリングはそうした人間関係の経験をカウンセラーと体験するもの。

カウンセラーと様々なことをわかち合ううちに、そこに喜び、信頼、勇気を得るのです。

過去のトラウマから立ち直る術

過去に受けたトラウマや心の傷。

その傷から立ち直るのは、もちろん、簡単なことではありません。

人によって、それがどんな経験だったかも違います。

また、どんな傷つき方をしたかも違えば、その傷の深さも違います。

ですから、過去に受けた心の傷からいかに立ち直るかは、その人その人によって違ってきます。

カウンセリングでは、そうした取り組みも続けています。

どの位の時間がかかるかも、これも、人によって違います。

数回のカウンセリングで立ち直る人もいれば、数年という時間が必要な人もいます。

ただ、この取組み、無暗に時間を急がない方が良いでしょう。

心の傷を解消するプロセスは、とてもデリケートです。

早く解消しようとした結果、逆に傷が深まることもあります。

セラピーのやり方が不適切だったために、かえってまた傷ついたり、状態が悪化する場合もあります。

ここには、かなりの専門性が求められます。

重要なことは、時間よりもプロセスです。

どういうプロセスを経て傷と向き合い、乗り越えていくのか。

その歩む道のりと歩み方が何よりも重要です。

傷ついた過去に向き合うことは、とても難しいことです。

思い出したくない過去と向き合うこともあり、心の痛みを伴うことも珍しくありません。

また、痛みに加えて、いろいろな思いが出てきます。

向き合いたくないという葛藤。

乗り越えられるのかという不安。

今、取り組んでいることは、意味があるのかという迷い。

こうした思いとも向き合わなければなりません。

【事例】「人が怖い」を克服したKさん

Kさん(20代男性)は、学生時代に人間関係で傷つき、それから特定のタイプの人間が苦手になりました。

どのくらい苦手かというと、急に話しかけられると頭が真っ白になって、会話した内容が全然頭に入ってこない・・・という程でした。

Kさんはサラリーマンですので、仕事をする上でとても困っていました。

上司の指示、仕事上の情報が頭に入ってこないので、同じ話をまた後で確認しないとならなかったからです。

しかも「人が怖い」という感覚があるため、後で確認という行動すらもなかなか取れませんでした。

「このままでは・・・」

そういう危機感を抱き、Kさんは、カウンセリングに通い始めました。

結論からいうとKさんは、「怖い」という感覚を克服しました。

では、いったいどうやって克服できたのでしょうか?

具体的な行動の工夫の積み重ねで恐怖を克服

Kさんはカウンセリングに通いながら、先ずは自分のトラウマ解消に取り組みました。

過去の経験を細かく振り返ることで、自分の偏った捉え方が変わっていきました。

そうやって少しずつ「怖い」という感覚が減少。

そして過去との取り組みと並行して、「現在への取り組み」も行いました。

会社での毎日のやり取りをカウンセリングで振り返り、新たな解決行動につなげていったのです。

私から細かく会話のやり取りのアドバイスを受けそれを職場の会話のやり取りに活かしたのです。

例えば

上司に指示を受ける際には、それをまとめて復唱(確認)する。

トラブルが起き、自分では対処不能だったら、自分で調べてもわからないことは、対処できる人間に確認。

解決途中であっても、途中結果をこちらから報告。

報告の際には、自分の作業がいつ完了見込みかを常に報告に添えていく。

こうした細かいアドバイスをKさんは一つ一つ実行していったのです。

その結果、Kさんは少しずつ「怖い」という感覚が小さくなっていきました。

具体的な行動レベルのアドバイスだったので、後はそれを実行することで、精神的に楽になっていったのです。

トラウマ克服のカギは小さな成功体験の積み重ねによる経験値

Kさんの顔つきやしゃべり方も、少しずつ変わっていきました。

緊張度合いが和らぎ、穏やかになっていったのです。

笑顔も増え、視線も柔らかいものに変りました。

私はKさんに、「人が怖い」という感覚をなぜ克服できたのかを尋ねました。

Kさんの話をまとめると、こうでした。

「アドバイスを受け、いろいろなことを心がけて上司や職場の人、顧客先と会話した。

その中で、少しずつ『大丈夫だ』『何とか出来た』という小さな体験(安心感)を積み重ねることができた。

その過程で少しずつ『怖い』という感覚が自分の中で小さくなっていった」

つまりカギとなったのは「経験値」だったのです。

新しい関り方を取り入れてやってみることで、「上手くいった」「そんなに怖れなくても大丈夫」という経験値、小さな手ごたえを積み重ねていったのです。

別な言い方でいうと「小さな成功体験」を繰り返したんですね。

でも、こうしたアドバイスを行動に移したり、新しいことを取り入れるのは、やっぱり勇気が要ります。

今まで「怖い」という対象や場面ですから、そのハードルはなおのこと、高かったはずです。

でも、Kさんはなぜ、そのハードルを越えられたのでしょうか?

トラウマを克服する第一歩は小さな勇気を持って行動すること

Kさんの勇気の源は何だったのか?

これについても、Kさんが教えてくれました。

それは「このままの自分ではいたくない」という思いがあったからだそうです。

過去のトラウマに支配されたままでいたくない。

後ろ向きで怯え続ける自分を変えたい。

もう一度、前を向いて生きていきたい。

こういう思いが心の底にあり、それが自分を何とか支えてきたというのです。

Kさん、実は今もカウンセリングに通っています。

さらに怖さを克服し、仕事のパフォーマンスを上げるべく、地道に試行錯誤を続けているんです。

年単位の取り組みですから、本当にがんばっています。

でも、20代で数年間努力することで、今後の人生の何十年が変わるとしたら・・・・

決して長い取り組みとはいえないでしょう。

カウンセリングでの取り組みとは、いわば学校に通って勉強するのと同じです。

しっかりとした学力や技能を習得するには時間をかけて学校に通いますよね。

通いながら学び、学んだことを実生活で活用。

活用したら振り返り、また学校に課題として持ち込み、次の機会に向けて学んでいく。

カウンセリングもまさに、こうした学習活動と同じです。

トラウマを克服する第一歩は小さな勇気を持って行動すること

Kさんは授業で得たアドバイスをもとに、それを職場で試行錯誤しながら使い、再び課題をもって授業に通ったといえます。

世の中の大学も2~6年通います。

専門学校だって2~3年かけて専門知識と技能をしっかりと身につけます。

そうして身につけた知識や技能は、一生ものになる場合もありますよね。

そして、その知識や技能のレベルが高いものほど、時間(年数)をかけて学びます。

Kさんは今も、そうした「挑戦」を続けています。

取り組みの途上ではありますが、この事例紹介をKさんは快く承諾してくれました。

私もKさんが更に前を向いて歩めるように、サポートを続けていきたいと思っています。

トラウマ克服に必要なことは自分の捉え方を変えること

そして、このように過去の傷を乗り越えるためには、いくつか大切な事があります。

まず、過去が変わるということです。

過去が変わると言われ、不思議に思った人もいるでしょう。

ですが、この「過去が変わる」ということが絶対に必要になります。

もちろん、過去に起きた出来事は変えられません。

タイムマシンで過去に行って、事実を書き換えるわけにもいきませんからね。

そうではなく、「過去に対する捉え方」が変わるのです。

過去に自分が経験した出来事。

私たちは、その出来事に対して、ある捉え方を持っています。

その捉え方次第で、過去が敵になるか、味方になるかが決まります。

過去の経験がトラウマや心の傷として記憶される。

それは、トラウマや傷として残る「捉え方」があるのも原因です。

ですから、その捉え方が変わると、トラウマや傷の度合いも変わります。

私の経験上、こういう取り組みをしても、100%傷が癒える人はいません。

何%かは人によって違いますが、必ず傷は残るものです。

ただ、大事なことは、その傷と共に、前を向いて生きていけるということです。

PCのように、データが消去でもされない限り、傷は残ります。

厳密にいえば、100%の修復は難しいのです。

しかし、その傷に苦しめられるのではなく、傷と共に前向きに生きていくことは出来るようになります。

そのために、過去に経験したことに対し、その捉え方が変わることが、大きなカギです。

トラウマ克服のもう一つのカギ

そしてもう一つ、カギになることがあります。

それは、取り組んでいくうちに「これからどう生きるか」が決まっていくことです。

何を大切に生きていくのかが定まっていくことです。

つまり、過去に対する捉え方が変わり、生き方が決まる。

この2つが揃うと、トラウマや傷はかなり解消されます。

いじめ、挫折、不条理な経験、自分が犯した過ちなど、心の傷につながる経験は様々です。

しかし、そうした辛い経験の捉え方が変わるとき、取り組む過程で多くの人が「何か」を学んでいきます。

過去のトラウマを克服する過程で、何か「学び」があると、過去に対する捉え方が自然と変わっていくようです。

自分を責め続けていた人は、先ず、責めることをやめます。

人を恨んでいた人は、先ず、その気持ちが解けていきます。

未来に絶望していた人は、やがて、新たな生きる道を見つけます。

取り組む過程でこうした経験をすることで、過去のトラウマや傷を克服していけるようです。

カウンセリングに訪れる方の中には、病気で苦しい思いをした方もいらっしゃいます。

そんな方たちがカウンセリングの卒業の際には、「自分は病気になって良かった」とまで言うのです。

にわかには、信じられないかもしれません。

しかし、綺麗ごとではなく、本当に「良かった」とまで仰るのです。

それも、しみじみと、実感を込めて話してくれます。

こういう言葉は、過去の捉え方が変わり、そこから何かを得られない限り出てこないものです。

あるいは、それが契機になって、自分自身を見つめ直し、新たな生き方が定まるからこそ、出てくる言葉です。

私たちにはトラウマに打ち克つ力が内在している

私たちの内側には、こうして立ち直る力が存在しています。

私たちの中にある潜在的な「内なる力」とでもいいましょうか。

カウンセリングで最後のよりどころとなるのは、実は、この力です。

カウンセラーとして関わる私は、この力を最も信頼しています。

私がこの力を信じられなければ、こうしたことは起こりません。

私がクライエントの皆さんの「内なる力」を、心から信頼して取り組む。

だからこそ、クライエントの皆さん自身も、自分の「内なる力」に気づく。

そこまで行けば、過去の捉え方が変わり、新たな生き方が見つかります。

新しい自分、新しい人生を開拓するのは、決して絵空事ではないのです。

過去のトラウマや心の傷は、乗り越えるためにあるのだと思います。

そして、最後はどこまで「自分を信じられるか」です。

どこまで自分を大切に思えるかです。

そう考えると、あきらめるのは、まだ早いと思います。 

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心理カウンセラー鈴木雅幸(コーチ・企業研修講師)のプロフィール

心理カウンセラーとして6000件以上(2020年4月現在)のカウンセリングを実施。
5年間にわたりスクールカウンセラーとして教育現場の問題解決にあたり、現在も個別に教育相談を受ける。
大手一部上場企業を始めとした社員研修の講師として10年以上登壇し、臨床カウンセラー養成塾を10年以上運営。
コーチとしても様々な目標達成に携わる。
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