自分の怒りの感情への対応のカギは、抑えたり気持ちを切り替えようとするより先に、先ずは受け容れることです。
アンガーマネジメントなど、怒りの感情をどうコントロールするかといったテーマが企業研修でもホッとです。
ただ、こうした手法では、怒りの感情を「悪いもの」として排除しようとしがちです。
怒りの感情は、不都合だったり時には厄介だったりはしますが、私たち備わった感情です。
これを敵視するのではなく味方につけることで、怒りが起こりにくくなったり、早くおさまるようになります。
以下、怒りの感情の捉え方と対処について解説します。
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怒らないほうが良いのだけれど・・・
怒ってしまって、後で後悔したり、後味の悪い気持ちになる。
そんな経験はないでしょうか?
だから怒りの感情というのは、なるべくなら無くしたいと思うものでしょう。
そして物事、やはり怒らないで進めた方が上手くいくことがほとんどです。
人間関係でも起こらずにいられた方が良好な関係を維持できます。
子育てでも、いたずらに怒らないで関われた方が子どもも伸び伸びと育ちます。
教育現場の指導でも怒らないで接する方が、子どもの成長が促進されます。
しかし、私たちはついつい怒ってしまいます。
それは、人間には「喜怒哀楽」などの感情があり、「怒りの感情」は誰にでも備わっているものだからです。
怒りの感情は物事を破壊する
「キレる」という言葉があります。
昔は「堪忍袋の緒が切れる」という言い方をしましたが、現代はこの「堪忍袋」がないわけです。
そしていきなり、唐突に、理由もなく激高する。
そういう場面が増えてきました。
怒りというのは人の心も、物事も破壊します。
攻撃的になり、モノの道理も関係なくなり、行きつくところは争い合いです。
戦争がその代表的な例ですね。
つまり、怒るとろくなことにならないのです。
だから私たちは出来れば怒りたくないと思います。
怒りの感情は、ただ抑えればいいの?
私たちの感情の中でも「怒り」は、その扱い方が特に難しいものです。
怒りというのは不快な感情ですので、上手に付き合う必要があります。
一般的にやってしまいがちなのが「怒りの感情」を抑えつけること。
怒りの感情を「良くないもの」として、ただただ抑えにかかります。
中には自分の中に怒りの感情が湧き上がっているのに、その怒りを無かったことにしようとする人もいます。
これを心理学では「抑圧(よくあつ)」といいます。
こういうことをすると、一見、自分は怒りをコントロールできたかに思います。
しかし、実際はこの「抑圧」行為は、大きな代償を払うことになるのです。
怒りを抑圧すると代償を払うことになる
一つは、抑え続けてきた怒りの感情が爆発する場合です。
鬱積してきた感情です。
その場の怒りに加え、これまで蓄積された怒りも同時に出てくるので、相手や周囲からすると「なんでそこまで怒っているのか?」となります。
また、私にもあなたにも「喜怒哀楽」など、様々な感情があります。
しかし、このどれか一つの感情を抑圧してしまうと、残りの他の感情も徐々に動かなくなってきてしまうのです。
この場合は「怒り」を抑圧することで、その他の「喜び」や「悲しみ」「愛情」などの様々な感情も抑圧傾向を見せます。
つまり、一つだけの感情を無かったことにはできないのですね。
もしあなたが一つの感情を抑えつけようとすると、他の感情の動きも段々鈍くなってきてしまいます。
そうなると、あなたはあまり喜ばない、あまり悲しまない。
あまり感動しない、いわゆる「平板(へいばん)」な人間になってしまいます。
では、豊かな感情を取り戻すには、どのようにすればいいのでしょうか?
怒りは「受け容れる」と早く静まる
カウンセリングでは、起きた感情はそのまま受け容れるようにします。
感情を抑圧せず、その感情が起きたことを認めるのです。
怒りの感情が起きたら「今、私は怒っている」とちゃんと認識します。
その上で、怒っている自分に寛大になることです。
怒りに寛大になることで、その怒りの感情を直視できるようになります。
怒りの裏にあるもの(怒りの原因)に気づく
直視できると、怒りの感情の奥にある「具体的な思い」に気づきます。
するとそこには「自分を認めてほしかった」とか、「不当に扱われてやり切れなかった」といった思いが潜んでいたりします。
更にそこから「自分は○○に責められた心の傷がある」とか、「△△の経験から人に失望されることを怖れていた」という風に辿ることができます。
こうして自分の怒りの感情の正体を知り、自分を苦しめてきた感情や思いを受け容れることができます。
なぜ自分が苦しかったかを知ることで、気持ちもグッと楽になります。
怒りの感情を外から俯瞰するのがコツ
結論を申し上げると、自分の中に起きた感情はできるだけ尊重し、受け容れてあげるのがいいわけです。
それがどんな感情であっても、等しく受け容れてあげることです。
受け容れ、直視できることで、その感情の外に自分を置くことができるからです。
「ああ、自分は怒っているんだな・・・」という具合になります。
怒っている自分を少し客観的に外側から眺められるようになり、この時点で怒りは少し和らぎます。
そして、こうした作業を続けていくと、さらに「自分はこんなに怒っていたんだな」という「怒りの程度」にも気づきます。
さらに作業を続けると「自分はこういうことに怒っていたんだな」「これが理由で怒っていたんだな」と気づきます。
そして「自分は傷ついていたから、それがやりきれなくて怒っていたんだな」という「怒りの本質」に気づきます。
自分の感情を受け容れると、人付き合いが上手になる
そうやって自分の様々な感情を受け容れられるようになると、あなたは情緒豊かな人間になります。
なぜなら、受け容れることができた感情は、他人にも自然に表現できるからです。
そして自分の様々な感情と付き合える人は、他人の様々な感情とも付き合えるようにもなります。
こうしていろいろなタイプの人とも付き合えるようになり、結果的に人間関係の幅が出てくるようになります。
カウンセリングは、自分の様々な感情を自ら受け容れる場です。
カウンセラーの力を借りて、自分の様々な感情を受け容れることで、いろいろな人や状況に対応できるようになるわけです。
なぜ人は怒るのか?これが怒りの感情が湧く理由
そもそも怒りの感情はなぜ湧いてくると思いますか?
どうして怒りの感情に人は悩まされるのだと思いますか?
それはこういうことなんです。
私たちはそもそも、どういう場面で怒りが湧いてくるのでしょう。
それは自分が「正しい」と思ったことと大きく違う現象に出会った時です。
例えばあなたが心の中で、「子どもは親の言うことを素直に聞くものだ」と考えていたとします。
そういう考え方が根底にあると、こちらが何か言って子どもが反発を示してくると、いちいち腹が立ってきます。
経験ありませんか(^^;
会社でも同じです。
「部下は上司の言うことに絶対従うものだ」
「後輩は先輩の言うことに絶対従うべきだ」
こういう考え方を強く持ってしまうと、もし部下や後輩が意見をしてきても、「問答無用」となるでしょう。
仮に部下や後輩があなたに礼をもって配慮しながら意見を具申しても、あなたは「聞く耳持たず」となり、その意見を却下してしまうでしょう。
相手がどんな思いで意見を言い、どの内容がどうかということより、意見してきたこそそのものに囚われ、大事なものを失いかねません。
こうした行動に伴う感情は、やはり「怒り」です。
怒りの感情があなたの言動や人に対する態度を本来のあなたではないものに狂わせてしまうのです。
物事の捉え方が変わると怒らなくなる?
しかし、仮にあなたがこのような考え方も持っていたらどうでしょう。
「子どもも親に自己主張したり、反発を示す権利はある」
「部下(後輩)でも、上司(先輩)に意見を言う自由はある」
こうした考えを持っているだけでも、相手に寛容になり、相手の話をちゃんと聞こうという姿勢が生まれます。
その結果、互いに信頼関係が生まれたり、建設的な関係が築けたりします。
私たちは自分が「正しい」と思っていることの幅が狭いと、その幅に入らない物事や経験は、全て否定しかねません。
その心の動きから「怒り」が生まれてくるのです。
怒りをなるべく生まないためには、自分の考え方に「幅をもたせておく」ことも大事です。
心の中にある「自分は正しい」を手放す
そして究極は「自分が正しい」という思いを持たないことです。
「自分が正しい」という思いを持たなければ、そもそも怒りという感情も湧いてきません。
目の前の物事にそのような思いや願いをもたず、「淡々と取り組む」ことができるようになると、ストレスも発生しません。
そしてこの「淡々と取り組む」という姿勢から実は、深く集中した状態を作り出せるのです。
余計な思いやはからいを捨てて、目の前のことに集中する。
瞑想や座禅の目指すところも、こういうところにあるといえます。
余計な思考や思いを捨て、自分の呼吸や身体感覚に全神経を集中させようとするわけです。
怒りの感情には強い破壊のエネルギーがあります。この破壊のエネルギーがあなたの健康を脅かすことにもつながります。
ですから余計な感情から自分を解き放ち、目の前のことに集中できるほど、心身の健康は保たれます。
「集中力」が怒りを生まない
カウンセリングの目指すところも、究極はこの「集中」にあるのです。
自分の中でどんな思いや感情が邪魔になっているかに気づき、そこから自分を自由にし、「今」の自分自身の身体反応に集中する。
そしてこの身体反応が最も信頼できるものであるとカウンセリングでは考えています。
こうした集中状態を得ることで、心の穏やかさと健康を取り戻せます。余計な怒り、ストレス、精神の落ち込みから決別できます。
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