依存症の原因・種類と治し方、克服の方法

「依存症」は依存行動ではなく、依存行動を起こす心理的な問題は何かに注目することが、脱却の第一歩。

依存症には買い依存、ギャンブル依存、アルコール依存、ドラッグ、恋愛依存、盗癖など様々な対象があります。

依存症を抜け出すためには、依存の種類やメカニズム、脱却のきっかけなどを知ることが重要ですので、ここから解説していきます。

「依存」と「依存症」の違いとは?

私たちは大なり小なり、何かに依存しているものです。

小さい頃は、親に依存する部分があって、恋人に依存する部分があって、人として成熟もします。

ですから、依存そのものだけを考えれば、全てが問題というわけではありません。

問題になるのは、その「程度」ですね。

小さい子供は、親にある程度依存しながら、だんだんと大人になっていきます。

また、依存の度合いを少しずつ減らしながら、やがては精神的に自立していきます。

ところが、その程度が強かったり長い場合。

これが問題になってくるわけです。

そしてその依存度が日常生活に支障をきたすようになってくると、「依存症」という側面が出てきます。

どんな依存症があるの?

依存症というのは、その対象はいろいろあります。

ギャンブル、買い物、アルコール、恋愛など・・・

物を盗ってしまう「盗癖」もやめられないという意味ではそうでしょう。

対象や程度も、人によって様々ですが、原因として考えられる共通の心理があります。

この心理的問題を解決することで、依存症からの脱却が可能になると、私は考えています。
(ただしアルコール依存、ドラッグは脳に物理的な依存状態やダメージを残しますので、心理的な問題が解決しても依存のリスクが常に残ります)

ですから、依存症は薬では解決しません。

一時的にお薬で症状を安定させる場合がありますが、根本解決にはカウンセリングなどの心理療法が必要になります。

では、依存症の心理的問題とは何でしょう?

そして、どうしたら脱却ができるのでしょう?

依存症の原因、心理的問題とは?

結論から先に書きますね。

依存症の人たちに共通することは、心に飢餓感があるということなんです。

心が何らかの原因によって、極度に満たされていない状態にあります。

私たちは心に強い飢餓感を覚えると、それを埋めたくなる衝動にかられます。

寂しくてたまらなくなったとき、誰かに一緒にいてほしいって思いますよね。

それがケタ違いに強く、深い。

そういう孤独感だってことです。

こうしたいっていう欲求が、自分の意志なんかではとても抑えられない。

場合によっては、気がついたらその行動を起こしていた・・という場合もあります。

盗癖なんかは、そういうケースがありますね。

心に強い、深い飢餓感がある場合。

寂しさ、不安、恐怖、虚しさ、怒りなど、強くて深い否定的な感情があることが多いのです。

これは実感がないとピンとこないかもしれませんが、悩みでいる人からすると、どうすることもできないほどです。

盗癖と向き合ったO君

大学生のO君は、自分の盗癖を克服すべく、カウンセリングに通いました。

その中で、彼は自分の衝動を抑えられないという周囲に理解されない苦悩を語ります。

そして話をしていくうちに、自分の心の奥に、欠乏感、焦燥感、そして怒りがあることに気づきます。

「それを、物で埋めようとしていたのかもしれない」

心が傷つかないように守ろうとするあまりに、いつのまにか心を閉ざし、動かないようにもしていた。

O君は自分自身に対する洞察を深め、盗癖の衝動から解放されるのでした。

一瞬の安らぎを求めるギャンブル依存症のKさん

あるサラリーマンのKさん(40代男性)は、ギャンブル依存症でした。

仕事などで不安が起こると、パチンコのお店などに入ってしまうのです。

使うお金も、家族の生活に支障が出るほどでした。

ギャンブル依存の場合、使われるお金が多い事、場合によっては借金を繰り返すことがあります。

そのため、生活が破たんしたり、家族が崩壊したりという深刻な状況に陥ります。

Kさんも、既にその状況になりかけていました。

しかしKさんはカウンセリングの中で、印象的な話をしてくれました。

ギャンブルに手を出したくなる時は、どうしようもなく心が落ち着かなくなる。

不安から言いしれないザワツキを覚える。

でも、唯一、そのザワツキが止む時がある。

それは、家族とピクニックに行って、一緒にお弁当を食べているような瞬間だ。

Kさんのこの証言からも、問題は心の問題だということがわかります。

そしてKさんのこころの不安の元をたどり、心がより満たされることで、彼がギャンブルに逃げる必要性がなくなっていくことでしょう。

気持ちの荒れを克服したCさん

サラリーマンのCさん(30代男性)も、ギャンブル依存の傾向がありました。

Cさんは職場や人間関係で上手くいかないことがあると、やはりスロットのお店でお金を使ってしまうのだそうです。

お店を出た後の、何ともいえない虚しさは、言葉に尽くせないほどだと言っていました。

しかしCさんは、カウンセリングによって、自分自身の強い劣等感と向き合い、その劣等感を克服することで、ギャンブルを手放したのです。

子どもの頃からいじめや理不尽なめに何度も逢い、それが強いコンプレックスを生んでいました。

自己否定感も、他者不信も強くなっていました。

しかし、過去の体験一つ一つと向き合い、Cさんの顔つきは穏やかになっていきました。

心が開放されていくことで、ギャンブルを手放すことができたのです。

綺麗なネックレスだからこそ、虚しくなった買い物依存症のTさん

買い物依存に悩むTさん(40代女性)の話しは、今も私の心に残っています。

Tさんは、寂しさや虚しさを覚えたとき、無性に宝飾品を買いたい衝動に駆られました。

それで、アクセサリーなどを買うのですが、買った宝飾品は身につけることはなく、部屋にその袋が並んでいる状態だというのです。

そして、Tさんはこう告白してくれました。

「先日も、とっても素敵なネックレスを買ってしまったんです。

それで帰ってから、鏡を前に、そのネックレスを自分の首にかけました。

そうしたら・・・・

その時が、一番虚しい気持ちに・・・

私は何をやっているんだろうと・・・・」

私はその話を聞いて、本当に胸が痛みました。

Tさんの虚しさ、寂しさ、悲しみは、どれほどのものだったのだろうと・・・・

欲しいネックレスを買ったのなら、それを身につける時は最高の気持ちになる。

喜びもMaxになる瞬間のはず。

でも、Tさんは、その時が一番虚しかったというのです。

そして、そのネックレスが本当に欲しかったわけではない。

首つけたその瞬間などに、いつも心底思い知らされるのだそうです。

では、Tさんが本当に欲しかったものは何だったのでしょうか?

心は心で満たされる

依存症に悩む人たちの心理の共通点。

それは心を満たしたいという強い欲求です。

そして彼らに共通するのは、それを「もの」で満たそうとしていることです。

こういうところ、彼らはいちいち頭で考えてやっているわけじゃないんです。

無意識にそういう行動になってしまうんですね。

ただ、残念ながら心を、モノやお金で満たすことはやっぱり出来ないんです。

お酒や共依存の関係からも、本当の「満たし」は得られません。

心は心で満たされます。

心ある人との心ある、血の通った関係によって、さびしさ、むなしさは満たされていきます。

依存症カウンセリングの効果とは?

依存症にカウンセリングが有効なのは、カウンセラーとの関係で、その第一歩を踏めるからです。

カウンセラーの専門性だけでなく、カウンセラーとの血の通った人間関係を経験する。

そこから人と心を通わす感覚を改めて取り戻していけるからです。

また、自分がどんな心の飢餓感をもっているのか?

なぜ、その飢餓感は生まれたのか?

ここをしっかりと見つめ直すことで、どう克服していけるかも見えてきます。

依存症に苦しむ人は、心が満たされることで、依存行動から解き放たれていきます。

焦らず一定の期間取り組んでいくことで、依存症から解放されるのです。

抜毛症を克服したYさん

抜毛症という心の病があります。

自分で自分の髪の毛を抜き続けてしまうのです。

女性に多く、長年苦しんでいる人も多い依存症(嗜癖)の一つです。

Yさん(20代女性)も、髪の毛を抜くのをずっと止められずにいました。

しかし、ある時、転機が訪れます。

カウンセリングを始めて3か月で、髪の毛を抜くのを止められるようになったのです。

カウンセリングの効果もありましたが、Yさんにはもう一つ、克服材料がありました。

大好きな彼に、抜毛症のことを告白しました。

そうしたら、彼は「一緒に乗り越えよう」と言ったのです。

その時、Yさんは「彼のために、絶対克服したい」という、そういう思いが心の底から強烈に湧き上がったのだそうです。

それ以来、Yさんは髪の毛を抜かなくなったのです。

これは「大切な誰かのために」という思いが、彼女の心の飢餓感を上回ったということなのでしょう。

心を心で満たしていく。

依存症脱却のカギは、ここにあるのです。

アルコール依存とドラッグ

アルコール依存とドラッグは他の依存症とは違ってきます。

両者とも心理的な問題が引き金になるところは他の依存症と基本は同じです。

しかし、アルコールとドラッグは物理的な損傷を脳に残すと言われています。

しかも、そのダメージは生涯消えることはないという研究データもあります。

他の依存症が心理的な問題の解決と共にその依存行動も解消するのとは違い、アルコールとドラッグは心理的な問題が解決しても、脳にその依存性がずっと残るというのです。

ギャンブル依存もそうですが、このアルコール依存とドラッグも発覚した際には当事者は「もう2度と飲まない」「絶対に手を出さない」と断言します。

しかし、そうした言葉や意識(決心)とは裏腹に、ちょっとしたきっかけですぐにまた手を出してしまうことがあります。

そしてアルコールの場合、ドラッグよりも厄介なのは日常生活のあちこちで手に入るということです。

飲食店でも、コンビニやスーパーでも、自動販売機でもです。

アルコール依存の治療の原則は、生涯アルコールを口にしないということです。

一口でも口にしたら、それまでの治療の努力の全てが水の泡になります。

つまり、一口でも飲んだら完全に逆戻りだと思ってください。

しかし、日常生活の様々な場面でアルコールの飲み物は目に入ってきますし、すぐに手にすることもできます。

そんな中、ちょっと心がモヤモヤしたり、傷つくようなこと、やり切れないこと、寂しさや苦しさを感じたときに、ついつい手が伸びてしまうことが多いのです。

ドラッグもそうですが、アルコール依存は本人や周囲の認識の何倍も立ち直っていくことが困難であるということを強調してもし過ぎることはないといえます。

【動画】寂しさを埋めるには?孤独より孤高

最後に、依存症の根っこにある心理的要因「寂しさ」について、短い動画で解説しました。

孤独感が根っこにあるために様々なものやことに依存してしまうことが多いので、こちらの動画もぜひご覧ください。

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心理カウンセラー鈴木雅幸(コーチ・企業研修講師)のプロフィール

心理カウンセラーとして6000件以上(2020年4月現在)のカウンセリングを実施。
5年間にわたりスクールカウンセラーとして教育現場の問題解決にあたり、現在も個別に教育相談を受ける。
大手一部上場企業を始めとした社員研修の講師として10年以上登壇し、臨床カウンセラー養成塾を10年以上運営。
コーチとしても様々な目標達成に携わる。
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