共感的理解とは、実は「実感」が伴うことが必要です。
そして、寄り添うためには、ただ寄り添いたいと思うだけではだめで、寄り添えるだけの「力」が必要になります。
実際の現場ではこうした真実にぶつかりますので、そのあたり、わかりやすく書きました。
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誰もが間違えている共感
「共感」という言葉があります。
カウンセリングだけでなく、最近ではビジネスの世界でも使われます。
言うは易く、行うは難し。
これはこの「共感」でも、例外ではありません。
カウンセリングを学ぶ。
あるいは、実際にカウンセリングをする。
その際に、共感はどうしても必要になります。
ところが、共感あるいは共感的理解を「本当の意味で実践できる人」は、案外少ないのです。
多くの人が、この共感が出来ずに苦労します。
また、多くの人が「出来たつもりになっている」ことも事実。
自分では出来たと思っている。
しかし、実際には出来ていない。
こういう場面を数多く見てきました。
では、共感できているとは、どういう「状態」を指すのでしょう。
実は、誰もが共感的理解を体験していた?
私がカウンセラーとして駆け出しの頃。
共感できている状態がどんな状態なのか?
よくわかりませんでした。
ただ、一つだけわかっていたことがありました。
それは、共感できているというのは、「状態」であるということ。
共感できているという状態なんだということ。
そのことだけは、わかりました。
結局この「状態」を自分で体現できるまでには、5~6年の年月を必要としました。
いえ、厳密にいうと、駆け出しの頃、既に体験はしていました。
体験はしていたのですが、それはほんの一瞬のこと。
再現性がなかったのです。
あなたも実は、既に体験しているのです。
例えば人の話を聞いていて「そうか!そういうことか!」と、膝を打つような感覚になった経験があると思います。
そういう時は、いちいち頭で考えなくても、自然と言葉が出てきましたよね。
そういう風に出てきた言葉に、相手はこういう反応を起こすはずです。
「そう!そうなのよ!」「でしょ~!」
女子会のトークでよく見られる光景です(笑)
ですから、一瞬であれば、誰もが体験しています。
カウンセリングでは、これを維持しすることが求められます。
そこに再現性が必要で、体現できることが必要なんですね。
共感とはこういうことだった
共感出来ているという状態。
私の場合、5~6年する頃から自分なりに再現(体現)が出来るようになりました。
感覚的には、言葉が自然と浮かんでくるという感覚。
適切な応答が勝手に自分の中から浮かんできます。
この感覚で発した言葉は、クライエントにスンナリ受け容れられます。
なぜ、クライエントにスンナリ受け容れられるのか?
それは、その言葉(応答)がクライエントの感覚にピッタリくるからです。
クライエントが一番伝えたかったこと、わかってもらいたかったこと。
まさにそのものズバリが言葉になっていたからです。
では、どうすればこのような言葉が出せるのでしょうか?
カギを握るのは「実感」です。
クライエントと同じ「実感」をわかち合うこと、わかち合えることです。
クライエントが伝えたい経験、感情、感覚、思い。
それらをカウンセラーが同じように、深くわかち合う。
すると、そこにはカウンセラーの実感も出てきます。
この実感が生まれれば、それを言葉にするのは難しくありません。
クライエントの悲しみ、怒り、虚しさ、不安、怖れ、絶望。
これらをリアルに、そして深くわかち合えるかがカギです。
そして、こうした感覚を頭ではなく、心で感じる。
心の実感を伴い、わかち合えている。
この瞬間に「共感的理解」が成立するのです。
もちろん、これは否定的感情や感覚だけではありません。
クライエントの喜び、充実感、希望、感動、感謝。
こうした肯定的な感覚も同様にわかち合います。
つまり、クライエントの人間性、経験、感情、感覚。
クライエントが伝えようとしているもの。
それらをまるごとわかち合おうとするわけです。
本当にわかち合えていれば、そこには必ず「実感」が生まれます。
この実感がないままに共感できたことにしようとする。
だから「おうむ返し」のような言葉しか出せないのです。
共感できる人、できない人
そして、実は次のことも大事なんです。
本当に実感があるなら、「同じ言葉じゃなくてもいい」わけです。
例えば、悲しみの表現はいくつもあります。
寂しさを表す表現も、比喩的だったり、擬人的だったり、ことわざだったり・・・・
それこそ、複数あるはずなんです。
実感があれば、これらを自分の言葉に変えることができます。
「あの言葉に、自分はとても動かされました」
こうしたクライエントの表明があったとします。
それにカウンセラーがどう応答するか?
「(その言葉が)刺激になったわけですね」
「(その言葉に)奮い立たされたんですね」
「その言葉が、胸に響いたわけですね」
という具合に、いろいろ表現が可能なはずです。
話の流れ、一番伝えたい感覚などを踏まえて、カウンセラーが言葉を選ぶわけです。
その「選ぶ」にしても、どれにしようかな・・ではないのです。
瞬間的に「これ」と浮かんでくるのです。
なぜなら、何度も言いますが、そこには自分の「実感」があるからです。
カウンセラーの実感があるから、自然に言葉になるのです。
しかも、その実感はクライエントの実感と出来るだけ近いものです。
つまり、「互いにわかち合えている実感」ということです。
そして、大切なところは、カウンセラーの実感を通して、クライエントが改めて自分の実感を味わい直すところにあります。
この「味わい直し」によって、クライエントは自分の感覚を、よりリアルに、より鮮明に、そしてより正確に再認識します。
自分が無意識だったり、不明瞭だった経験、感情、感覚などを改めてしっかりと意識化できる瞬間です。
カウンセリングによって、クライエントは自分の感覚を改めて、あるいはより鮮明に「自覚」します。
その繰り返しの体験によって、自分の無意識を意識化し、自分自身や問題の本質に気がついていきます。
これがカウンセリングの大事な本質の一つなのですね。
この実感の感覚がコンスタントに持てるようになると、カウンセリングの進展は飛躍的に進み、その面接はかつて経験のないほど深まります。
クライエントの自己洞察や問題への洞察も、面白いように進み、深まっていくわけです。
共感とは、こうした感覚や実感をもつこと。
共感できるとは、そうした「状態」になることです。
寄り添うとは
“寄り添うためには力が要る”
私がいつもお伝えしていることです。
大切な人が困っている時、身近な人が辛い思いをしているとき。
私たちは何とか力になってあげたいと思います。
そして、どうしたらその人に寄り添えるか、試行錯誤します。
ところが、寄り添うというのは、時には困難を極めます。
なぜなら、寄り添いたいという思いだけでは、寄り添えないからです。
確かに、思いは大切です。
寄り添いたいという思いがなければ、寄り添えません。
しかし、その思いがあっても、どうしても寄り添ってあげられない時もあります。
なぜなら、寄り添うためには、寄り添えるだけの「力」が必要だからです。
例えば、我が子が不登校になったとします。
親なら、命がけで救いたいと思うかもしれません。
そんな覚悟や愛情があったとしても、不登校を解消できない。
親として懸命に寄り添おうとしても、募るのは無力感ばかり。
こういう事態はちっとも珍しいことではありません。
愛情がある親なら寄り添えると思うかもしれません。
でも、いくら愛情があっても、寄り添えないケースがたくさんあります。
なぜなら、そこには不登校や児童心理に関する専門性が必要だからです。
この専門性とは、知識だけではなく、解決に導く力であり、様々な組み立てや働きかけのスキルなどです。
ただ、その専門性もある視点がなければ成り立たないのです。
この「ある視点」こそ、セラピーやカウンセリングでも重要な視点です。
寄り添う方法と大切な視点
その視点とは「なぜ」という視点です。
こうして言葉にすると、たった一言で済んでしまいます。
しかし、この「なぜ」という視点を持つことの難しさは、その視点がすぐに失われてしまうというところにあります。
問題が刻々と深刻さを増したり、複雑になっていく渦中にいると、いつのまにか「なぜ」ではなく「どうすればよいか」に走りたくなります。
常に「なぜ」の視点からものを観ていかないと、「どうすれば」が結局「どうしよう」になってしまうんです。
「なぜ、この問題が起きたのだろう」「今、何が問題なんだろう」
「あの子のあの一言はどういう意味だろう?」
「なぜ、この人は身動きが取れないのだろう?」
こうした視点を常に働かせていく。
問題や当事者の心にまっすぐに関心を向け続ける。
わずかな疑問や違和感を見逃さず、そこからヒントにしていく。
こうした鋭い観察や洞察を常に続けていく必要があります。
問題に、そして当事者の人たちに、強くまっすぐな関心を向け続ける。
これが問題解決にとても重要な視点となるのです。
その視点を持ち続けることが、自分の専門性を高めることにもつながります。
結果として「寄り添える力」の獲得につながっていくわけです。
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