来談者中心療法とその技法




来談者中心療法は、クライエントの人間的な復元力、立ち直る力を信頼する姿勢に、その特徴があります。

深い人間信頼に根差したセラピーともいえ、クライエントとカウンセラーとの関係性と対話を重視した心のケアといえます。

そうした本質的な可能性が、昨今のカウンセリング学習では極めて貧弱な指導によって随分とその存在が霞んでしまいました。

録音や逐語の検討法は極めて強力な訓練法であったのに、今では優れた指導者がいなくなってしまったことですっかり廃れてしまっています。 

改めてカール・R・ロジャーズの来談者中心療法の本質をわかりやすく解説します。


<目次>
来談者中心療法の技法 
来談者中心療法と自己概念 
来談者中心療法の自己一致 
来談者中心療法 3つの条件 


来談者中心療法の技法 

「カウンセリングは何もしなくてもいい?」

来談者中心療法にはいくつかの技法があります。

単純応答、繰り返し、リード、明確化、場面構成・・・・

どれも基本的な技法ですね。

心理面接を実施する上で、技法は確かに重要です。

こうした技法が専門化されればされるほど、面接の成果は出てきます。

しかし、それらは「生きた技法」である必要があります。

今回は、技法を生きたものにするためのポイントをお伝えします。

私がスクールカウンセラーをしていた時のことでした。

ある小学3年生の男の子とカウンセリングをすることになりました。

仮にC君としましょう。

C君は家や学校でお金のトラブルを起こしてしまったのです。

お母さんの財布からお金を盗りました。

教室でクラスメイトに自分の持ち物を売りました。

この事が発覚して、問題になったのです。

保護者にも連絡がいきました。

学校側はC君の母親に私(スクールカウンセラー)との面接を勧めました。

そこでまず、C君の母親が相談室にやってきました。

お母さんは今回の一件でとても胸を痛めていました。

時折り涙を流しながら、今回の一件や我が子への思いを話してくれました。

母親「あの子には、習い事や勉強のこと等、いろいろ言い過ぎたかもしれません」

私「それが負担になったのではないかと?」

母親「そう思うんです。最近、家であまりしゃべらなくなって・・・」

私「C君の胸の内が気がかりなんですね」

そんないきさつで母親は、C君のカウンセリングを希望しました。

本人もOKということで、C君とのカウンセリングが始まりました。

相談室に通うことになったC君は、カウンセリングではあまり話さない子でした。

カウンセリングの時間は毎週30~40分くらい取っていたのですが、その間、ほとんどしゃべらないのです。

私「話すこと、話したいこと、なにかある?」

C君「・・・・・特にない」

<沈黙3分>

私「・・黙って座っているのは窮屈ではない?」

C君「・・・・大丈夫」

<沈黙5分>

私「なかなか話せないというか、言葉にできない」

C君「・・・・・・・」

私「できないというか、話すことが浮かばない」

C君「<うなづく>・・・・・」

私「そうか(笑)・・浮かばないかぁ・・・」

<沈黙7分>

私「今、大変だなあとか、嫌だなあと思っていること、ある?」

C君「<沈黙数十秒>・・・う~ん・・・・」


・・・こんな調子です(笑)

こうしたやり取りをしてまた沈黙の時が流れるのです。

時には20~30分、沈黙の時が流れることも、ありました。

しかし、来週どうする?と聞くと、C君はニヤッとしながら「・・・(相談室に)来る」と答えるのです。

そこには「母親や先生からの勧めだから」というだけではない、C君の小さな"意志"のようなものを私は感じました。

こんな面接が数回続いたある日、担任の先生から話がありました。

C君の学校での様子が、見違えるように良くなっているという報告でした。

またお母さんからも報告が入るようになりました。

家ではとても落ち着くようになり、自分の言いたいこともはっきりと言うようになったというのです。

そしてお母さんが家でC君に「カウンセリングにはまだ行くの?」と聞くと、ニヤっとしながら「・・・行くよ」と答えたそうです。

カウンセリングも5回目となりました。

面接の最後、いつものように「来週は?」と聞くと、C君の様子がいつもと違いました。

いつもより真っ直ぐ私の顔を見ながら、何かを伝えたい様子でした。

そこで、少し私は黙って待っていました。

C君が自分の意志を自分の言葉で伝えられるようにと思ったのです。

するとC君は、やや照れくさそうに「・・・もう大丈夫」と答えました。

そうです、C君は自らカウンセリングの終結を宣言したのです。

結局、C君とのカウンセリングはこの5回目で終了しました。

さて、あなたはこの事例から、何を感じますか?

私は何かC君を諭したり、何かを説いたり、励ましたりしたわけではありません。

質問を重ねてC君の内面を引き出そうともしませんでした。

しないというよりは、出来なかったというべきでしょう。

私がC君を前に意識していたことは、ただ、C君の存在をそのまま受け止めようということでした。

C君の出したシグナル、C君の小さな訴え、C君のわずかな感情表明。

それらを出来る限りそのまま受け止めようと努めました。

話したくなければ黙っていればいい。

話したいことがあれば話してくれればいい。

私はそんな意識でC君の目の前に座っていました。

そして心の深い所では、限りなく安定している感じを大事にしました。

それこそ自然体のままでいるようにしました。

何かをするのではなく、ただ「そこにいる」ようにしました。

ひたすら「そこにいる」ようにしました。

そうした私の心はC君の深い部分に伝わったようです。

「ただ、そこにいる」「ひたすら、そこにいる」

ここには「肯定的に」「純粋に」という感覚が必要です。

この深い感覚こそがクライエントの心に伝えわり、カウンセリングの技法も生きたものにしていくわけです。

何をするかではなく、どうあるか?

最終的にカウンセリングの成否を決めるのはそこです。

傾聴にしても「ひたすら聞かせて頂く」という心がなければ、傾聴にはなりえません。

決して表面的な技法で通用する世界ではないということですね。

傾聴が難しい、上手くいかない、納得のいく傾聴ができない。

そんな時は「心と技法」の両方を高めるという発想に変えましょう。 


来談者中心療法と自己概念 

カウンセリングではこの自己概念の変容に取り組みます。

先ずは自分がどんな状況にあるのかを客観的に理解します。

続いて自分がどのように感情的になっているかに気づきます。

その結果、視野が広がり理性的になり、物事を冷静に見ることができます。

物事をしっかり捉え、本質に目が向くようになり、不安がなくなります。

行動も適切で、しかも積極的になるので仕事や人間関係が好転します。

本当の自分はそんなに悪くない。

自分に対して小さな、そして静かな誇りみたいなものを感じられるようになります。

例え自分を肯定的に見られなくても、いたずらに否定的な捉え方に固執することはなくなります。

その結果、今までよりもっと多くの仕事をしてみよう。

今までよりもっと多くの人に関わろう。

そんな意欲が出てきますし、集中力も持続するようになります。

周囲に対して注意も向くようになり、仕事の成果もあげやすくなります。

人間関係にも好影響が出てくるのは当然です。

では、このような自己概念の変容のために、具体的に何をするのか?

物事や自分自身を正確に認識し直すということをやります。

そしてそのために「傾聴」「共感的理解」を中心とした関りをもちます。

そもそもカウンセリングは、クライエントの人間的な成長を起こし、問題解決を図ります。

そのために自己概念の変容も必要になるのです。

具体的に行う技法が「傾聴」「共感的理解」です。 


自己概念と傾聴・共感的理解 

ところが、最初に「傾聴」「共感的理解」を教える学習機関があります。

これは、学ぶ順番が逆なのです。

傾聴などの技法は「枝葉」です。

これを先に学ぶから、傾聴だけしてればいいという安易な理解の仕方になりがちなのです。

先に学ぶのは幹である「人間的な成長によって問題解決を図る」です。

そのために必要なの技法の一つを「傾聴」とするから、何をするのが傾聴なのかも見えてきます。 

傾聴は相手の話を正確に聞くことであり、聞けることです。

相手の話を正確に聞くことを通して、相手を正確に観察できます。

これがカウンセラーからすると、クライエントの正確な理解につながります。

クライエントのパーソナリティー、置かれた状況、心理状態に対する理解です。

また、共感的理解とはクライエントの経験や感情、感覚をわかち合うことです。

クライエントは自分の経験や感情、感覚をカウンセラーにわかち合われることで、自分の感覚に自信をもち、自分の理解も深めます。

こうしたプロセスがクライエントに自己を客観的に捉え直す機会を与え、否定的な面だけではなく、自分自身を全体的に捉えられるようになります。

傾聴や共感的理解は、そうした経験をクライエントにしてもらうための技法なのです。


来談者中心療法の自己一致 

ではどうすれば自己一致した状態になれるのかということが問題になります。

自己一致することが良いカウンセリングを行う条件だとするならば、ここが大切なところになります。

結論から言うと、自己一致した状態というものは、一朝一夕になれるものではありません。

自己一致とは、カウンセラーの状態を指して言うことなので、それ相応のトレーニングと経験値が必要になることなのです。

クライエントの話を聞き続けながら、その瞬間瞬間で感じていくことと考えることに対して、常に自分でモニターが出来ていることが必要になります。

自分の中に起こる反応や心理状態を、常に正確に自覚できる反射神経が必要です。

カウンセラーはクライエントの話を正確に反射する能力も必要で、これは試行錯誤を含めた経験値やトレーニングが欠かせないことなのです。

では、具体的にはどのようなトレーニングや経験値が必要なでしょうか?

まず、ロールプレイにしてもカウンセリングの面接にしても、その会話のやりとりを録音します。

そしてそのやりとりの逐語記録を起こし、主にカウンセラーの応答をチェックしていきます。

クライエントの語りと、それに対するカウンセラーの応答を丹念に検討していきます。

すると、特にカウンセラーの言動に、自己一致出来ているかどうかが見て取れます。

カウンセラーの言い方、選ぶ言葉や表現、応じるタイミング、声の調子など。

つまり、応答全体を丹念に検討することで、カウンセラーがその時々で自己一致出来ているか、いないかを確認出来るわけです。

ここでポイントになるのは、こうした録音記録に基づくリアルタイムでのカウンセラーの反応を押さえることです。

こうした記録がなく、面接後にカウンセラーの記憶のみを頼りにした記録では、面接の中での自己一致の状態を把握出来ません。

カウンセラーの自己申告だけで行う検討会では、実際の面接で起きたことがわからないのです。

カウンセラーが自覚できていない反応や応答に関しては、ほとんど振り返ることは出来ません。

また、カウンセラーに防衛が働いた場合、自己申告による記録には面接での動き方、実際に起きたことなどが、正確に反映されない可能性も出てきます。

まして、一言半句の詳細な検討の実施は難しくなります。

だからこそ、録音記録や文字記録を介した検討や振り返りが必須なのです。

ですから、こうした記録をベースにした厳密な検討を繰り返すことが、自己一致を確立する最も確実な方法であり、近道だともいえるわけです。

それらか、カウンセラーが自分自身をチェックし、向上させるためのトレーニングや研修としては、指導者による教育分析が必要になります。

指導者によるカウンセリングを受け、自分自身のバランス、クセなど、パーソナリティー全体のチェックと向上を目指します。

さらには「エンカウンターグループ」などのグループセッションに参加することで、自分のコミュニケーションのチェック、グループ経験による自己洞察も行うと良いでしょう。

自己一致しているかどうかは、自分一人ではなかなチェックが難しいものです。

このような指導者や他者との関りによる研鑽を続けていくことにより、レベルの高いカウンセリングを行うことができるようになります。
 
 


来談者中心療法 3つの条件   

ロジャーズが重要視した自己一致、共感的理解、そして受容、肯定的配慮(積極的関心)というカウンセラーの基本的態度(姿勢)。

先ず「自己一致」とは平たくいうと「感じていること、考えていること、そしてその言動や態度が一致していること」ということになります。

自分が何か出来事に遭遇したり、何らかの経験をした時に感じたことがあるとします。

そして、その感じたことを受けて考えることや、感じたことに対して考えること、それから話すこと、取る行動。

それらが、一貫していること、互いに矛盾がないこと。

そうした状態を、 自己一致していると言います。

つまり、端的に言うとそこに「ウソ」がないことを言います。

『共感的理解とは、相手の言いたがっていること、わかってほしがっていること、訴えたがっていることを、言いたがっているまま、わかって欲しがっているまま、訴えたがっているままに理解することである』

私はカウンセラーとして、この師の教えを現場でとにかく忠実に、しかも丁寧に行うことを心がけています。

なぜならば、こうした共感的理解を最も重視した姿勢でなければ、対人援助そのものがり立たないと思うからです。

共感的理解の効果は何か?これ、意外と説明できない人が多いと思います。

共感的理解は単に「辛いね」と歩調を合わせたかのような態度を見せることではありません。

共感的理解はしっかりとしたセラピー効果があるのです。

共感的理解をしっかりと実践していけば、かなりのことが出来るし、様々なケースでクライエントの精神機能の回復を起こせます。

カウンセリングにおける受容とはどういうことなのでしょうか。

一言で言ってしまうと「そのまま認める」という言い方が一番近いのではないかと思います。

これは肯定するとか称賛・評価するということとも違います。

肯定も否定もせず、そのまま受け止める。

「そうなんだ」「そういうことなんだ」 という風に認識するということになります。

例えば、 クライエントが上司に対する不満や批判を口にしたとします。

その時に聞く側が「その上司はひどいマネジメントをするものだ」とか「そんなふうに上司を批判するからこの人はつまずくのだ」などと思うとします。

これはクライエントの話を聞いて、その話の内容や話しているクライエントに対して、何らかの評価や批判をしていることになります。

また、クライエントが自分の努力について語っている時に「それは素晴らしい」と捉えれば、それは賞賛していることになります。

称賛したい気持ちになるのは問題ないのですが、受容ということで言えばどちらも当てはまりません。

受容とはこうした称賛や評価・批判ではなく、 そのままその話を認識することです。

先の例で言えば「そうか、この人は上司に対してそのような不満を抱いているのか」とか「この人は今、そのような努力をしているのか」と認識することです。

カウンセリングでいうとこれが受容にあたります。
 


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