カウンセリングでの沈黙、その種類と技法、対応




沈黙というのは一般的には避けたいものの代表格ですが、実はカウンセリングではこの沈黙こそ重要な要素となっています。

しっかりとしたカウンセリングが出来るということは、この沈黙を十二分に生かせていることとイコールになります。

そこで、しっかりとしたカウンセリングの命でもある沈黙の理解と対応について、わかりやすく具体的に解説しています。 


<目次>
カウンセリングでの沈黙 
カウンセリングでの沈黙の種類 
カウンセリングの沈黙と技法 
カウンセリングの沈黙の対応 
沈黙をカウンセリングに活かすには 


カウンセリングでの沈黙 

カウンセリングをしていて、多くの方がぶつかる問題の一つに「沈黙(の場面)」があります。

沈黙にどう対処していいのかわからないというものです。

これまで私の塾では数多くのロールプレイ実習を行いました。

いろいろなロープレを観察し、検討。

そこで見えてきたこと。

それは、とても多くの人が「沈黙を怖れている」ということです。

それが私の想定以上の数だったのです。

ロープレが始まり、しばらくやり取りが続きます。

程なく、会話がひと段落。

そして沈黙が起こります。

すると彼らは沈黙に戸惑い、困惑し、つい不用意な言葉でその間を埋めようとしたくなります。

その結果、本来出てくるはずのクライエントの問題が出てこなくなる。

あるいは面接の流れがずれてくる。

そうなるとカウンセラーはますます焦り、さらに多弁になってくる。

結局はカウンセラーばかりが多くを語る面接に終わってしまう。

また、カウンセラー側には、こんな恐れがあります。

それは、沈黙に狼狽するこちらの姿に、クライエントから「無能」と見られるのではないか・・という怖れです。

そうした恐れが沈黙に対する恐れになっている部分もありますね。

ロジャーズはカウンセリングでの沈黙の場面はとても大切だと説いています。

なぜなら、沈黙の後に、クライエントから発せられる内容。

その内容は、洞察が一歩深まったものであるいことが多いからです。

そして沈黙を活かしたカウンセリングは、やはり深まり方が違います。

沈黙は怖れるものではなく、生かすものです。

沈黙の意味、種類を見極め、どう対処すればいいのかを的確に判断することが大切です。

つまり大切なのは、沈黙を見極める力ですね。

養成塾では「ここは待つべき沈黙」「これは動くべきです」という言い方を塾生にしています。

もちろん、どう違うのか、どう見極めるのかもお伝えし、その根拠も説明していきます。

逐語検討やロープレの検討といった具体的な場面を使って行っています。

様々な沈黙に適切に対応できれば、クライエントの洞察は深まります。

また、沈黙に動じず、落ち着いているカウンセラーの態度に、クライエントは安心と信頼を覚えます。

なぜなら、沈黙も含めて受容されているという経験が、クライエントを様々な抑圧から解放していくからです。

私が経験した沈黙で最も長かったものは30分です。

その後の面接でクライエントはこう話してくれました。

「あの時、ずっと待っていてくださって、本当に助かりました」

つまり、待つべき沈黙だったということです。

昭和20~30年代の臨床家の逐語記録を見ると、もっと長い沈黙も珍しくありません。

逐語の随所に「間」や「沈黙」が発生しています。

当時の臨床家たちは、それだけ「間」や「沈黙」の重要性と可能性がわかっていたのでしょう。


師匠の研究所で訓練を受けていたとき、私は沈黙に関してこんなやり取りをしました。

師匠の過去のカウンセリング面接。

その録音と逐語を授業で学んでいる時のことでした。

その面接の後半は、連続して沈黙が起きていました。

そこで私はこんな質問をしました。

「先生はこうした沈黙では、どんな気持ちで臨んでおられるのですか?」

師匠はしばらく眼をつぶって黙っていました。

そして目をつむったまま、静かにこう言ったのです。

「自分の内面を見つめている」

当時、私にはこの意味が十分には理解できませんでした。

しかし、その後、自分も経験を積んでいくうちに、その言葉の意味、そして重みが理解できるようになりました。

沈黙の見極めができるようになると、それまでとは違った進展や深まりが生まれます。

そこで我慢できずにカウンセラーが動いてしまう。

それは、そうした進展や深まりの芽を自ら摘んでいるのと同じです。

今の時代、私たちの会話は落ち着きを失っています。

あまりにも「間」や「沈黙」が失われているのです。

会話の中に「間」や「沈黙」が自然と生まれ、それが生きた時間になる。

そういう人間関係が、再び求められる時代になるような気がします。

こうした観点からカウンセリングでの沈黙というのは、非常に重要な場面であるといえますね。

沈黙を怖れず、存分に生かすカウンセリングをぜひ実践できるためには、いくつかポイントがあります。 


カウンセリングでの沈黙の種類 

沈黙にはいくつか種類があるのをご存知でしたか?

沈黙といっても、そこまでの流れや相手との関係性、相手のパーソナリティーなどによって同じ沈黙はないものです。

では、沈黙にはどのような種類があるのか?

以下にいくつか解説します。

先ず、沈黙には大きくわけて2種類の沈黙があると覚えてください。その2種類とは「動きのある沈黙」と「動きのない沈黙」です。

それぞれ、見ていきましょう。

●動きのある沈黙

・クライエントがどういうふうに表現しようか言葉を探している沈黙。

・自己洞察を行っているときに生まれる沈黙。

・カウンセラーの言葉をじっくり味わっている沈黙。

・クライエントがある事柄・感情を告白してホッと一息ついている沈黙。

・気持ちが静まるまでしばらく話したくないという沈黙。

こうした沈黙は動きのある沈黙です。

この沈黙だと判断できた場合、カウンセラーはよくこれを観察し、クライエントの次の出方を”待つ”という対応をします。

●動きのない沈黙

・クライエント自身が極度に抑圧され緊張している沈黙。

・クライエントがカウンセリングに拒否的な態度による沈黙。

・特に話すことも浮かばず、クライエントが少し居心地の悪さを感じている沈黙。

このような沈黙に対しては、カウンセラーは何らかの言葉がけなどを行い、クライエントの発言を促進することが必要となる。 


カウンセリングの沈黙と技法 

さて、実際に沈黙に遭遇したとき、その沈黙が上でいう「動きのある沈黙」なのか、それとも「動きのない沈黙」なのかを判断するポイントは何でしょう?

ここで指摘しておきたいのは、多くの人たちが沈黙に戸惑うのは、その沈黙が何故起きて、どういう種類の沈黙なのかがわからない、判断できていないからです。

沈黙がどういう種類のものかがわからなければ、どう対応していいのかも当然わかりません。

沈黙にを多くの人が嫌うのは、こうした理由もあるのです。

では、沈黙の種類はどういうふうに見極めができるのでしょうか?

ポイントはそこまでの会話の流れをしっかりと理解できているかどうかです。

そこまでの流れをしっかりと理解できていれば、そこで起きる沈黙がその流れによって起こっているのか、無関係に発生しているのかが判別できます。

話がひと段落していない中で生まれる沈黙なら、言葉を探しているのか、何かを思い出そうとしているのか、様子を見ればわかります。

そこで「これは何か思いだそうと考えているんだな」となり、「思い出すまで待とう」という判断ができます。

また、話が完全にひと段落し、次の話が出てくる気配が感じられない場合、これは動きのない沈黙といえると判断できるので、少し様子を見てから何か働きかけを行おうという判断にもつなげられます。

このようにそこまでの会話の流れをしっかりと押さえられていることが沈黙への対応には欠かせません。

すなわち、しっかりと傾聴できていることが沈黙への対応にも影響大であるということがわかります。 


カウンセリングの沈黙の対応 

「"間"が待てる人、待てない人」

カウンセリングには"間"がつきものです。この"間"や"沈黙"というのは、実はとても重要なんです。

カウンセリングをやり始めた初心者は、この"間"や"沈黙"が怖くて待てません。

待ちきれなくて、「ところで・・」といって話出してしまったり、ついつい無駄な動きをしがちですね。


ところが、この"間"や"沈黙"を待てるようになると、カウンセリングのスキルが一段も二段もレベルアップしていきます。


以前ブログやメルマガにも書きましたが、この"間"や"沈黙"には、埋める必要のあるものと、待つ必要のあるものがあります。

どちらの種類のものかは、そこまでのカウンセリングの流れや、クライエントとのやり取りを正確におさえられればわかります。

特に、黙って自己洞察をしたり、そこまで話した内容から先を辿り始めたり、自分の内面を表す言葉を探しているような"間"や"沈黙"は待つべきです。

そこを粘り強く待っていると、クライエントの話が新たな展開を見せることが意外と多いんですね。

ただ、あまりに長い沈黙によって、クライエントを緊張させたり、気持ちを頑なにさせてしまってもいけません。

そういう場合は、こちらからちょっと動いてみます。

例えば、沈黙しているクライエントの内面を言葉にしてみます。

「なにか、言葉にするのが難しい感じですか?」
「何を話せばいいか、ちょっと困っちゃってる?」

あるいは、そこまでの話をもう一度簡潔に整理する。

「つまり、人間関係、中でも職場の上司の方との関係が思うように築けないのですね」

まあ、他にもいろいろ対応の仕方はありますが、こちらからこうした働きかけをして、クライエントの反応をみます。

いずれにしても、黙っているクライエントに対する「理解」が深ければ深いほど、カウンセラーも、適切な動き方ができるわけです。

こうしたことは、臨床実践の経験を積んだり、適切な指導者から学習することで、わかるようになります。

 
沈黙をカウンセリングに活かすには  

「沈黙が怖い?それとも・・・」

カウンセリング面接を行うと、間や沈黙が頻繁に起きます。

日常会話で沈黙が起きると、少しでも早くそれを埋めようとします。

日常会話での沈黙は、気まずさにつながることが多いからです。

しかし、カウンセリングでは、沈黙は一つの大切な場面です。

沈黙をいかに生かしていくかが、カウンセラーの腕の見せどころです。

実力のあるカウンセラーは、この沈黙をむしろ十二分に活用していきます。

経験の浅いカウンセラーは、初めのうち、この沈黙に耐えられません。

話しが途絶えてしまうと、途端に落ち着かなくなります。

それはなにか自分の無力さが露呈している場面に感じるからかもしれません。

沈黙が起きると耐えられないカウンセラーは、すぐにその沈黙を埋めようとします。

単に沈黙を埋めようとして何かを言うので、その言葉は結果的に不用意な言葉、対応となってしまいます。

カウンセラーの発する一言は、たとえそれがどんな場面のどんな一言であっても、必ず次につながる一言である必要があります。

なぜなら、カウンセラーの発する一言によって、面接の流れが大きく左右されてしまうからです。

カウンセラーの一言は全て、面接の大切な流れを生む「置き石」です。

一つ一つ丁寧に、そして意味のある場所に置いていかなければなりません。

クライエントが確かな道のりを歩むための「置き石」となるように・・です。

ですから、そこまでの会話の流れやクライエントの内面に十分な注意もなく、単に沈黙を埋めようとする言葉や対応は、やはり不用意になるといえます。

カウンセラーの力量を見極めるには、沈黙の場面でどんな対応を見せるか?

すぐに動いてしまうのか、じっくりと構えていられるのか。

その態度によってその実力のほどが伺われるといってもいいでしょう。

力のあるカウンセラーほど、沈黙の後におとずれる場面がカウンセリングの進展につながることが多いことをよく知っています。

だから沈黙に対して落ち着いて待っていることができるわけです。

もっというと、待つべき沈黙か、埋めるべき沈黙かをしっかりと見極められる力を持っているということですね。

今、生まれているこの沈黙にどんな意味があるのか?

この沈黙までの面接の流れはどういったものだったのか?

こうしたことをしっかり押さえられれば、沈黙に動じることはないでしょう。

私のカウンセリングでも、よく沈黙の場面に遭遇します。

場合によっては30分も沈黙が続くこともあります。

しかし、その沈黙の意味が理解できていれば、いくらでも待つことができます。

そういう沈黙の後に出てくるクライエントの言葉は、一歩深まった内容になることが多いんです。

沈黙に遭遇した際に、いかに落ち着いていられるか。

これは本当にカウンセラーの力量が問われるところですし、カウンセリングの成否を左右します。

沈黙の時間がクライエントにいかに大切であるかを、ぜひ知っておいて頂きたいと思います。 


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